榊原知美 さかきばら ともみ
東京学芸大学 国際教育センター准教授。専門は発達心理学・認知心理学。幼児の数概念の発達や子どもの知的発達に対する大人の支援などについて研究を行っている。『算数・理科を学ぶ子どもの発達心理学:文化・認知・学習』(ミネルヴァ書房)。
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生活・しつけ
年長 2015年8月24日の記事
夏を境に、年長の子のいるご家庭では、「うちの子、来春入学してから、勉強についていけるかな?」とちょっとあせってくるようになります。
かといって、「自分の名前は読めるけど書くのはまだ無理」「数を数えるのも少しあやしい」という子に、なんとか文字や数を教えようとしても、なかなかその気になってくれないことも。こんなとき、どうすればいいのでしょう?
子どもの数の理解の発達に詳しい東京学芸大学准教授の榊原知美先生にうかがいました。
●理解できないから興味を持たないということも
小学校に入るまでに、子どもには文字や数を少しでも覚えてほしいのですが、教えても覚えない、全然興味を持ってくれないということも多いようです。どんなタイミングで教えるのが効果的なのでしょう?
榊原 「幼児期は、ちょっと数を数えられるようになると、しつこいくらい大人の前で数えたり、『僕、この字書けるよ! 見てて』なんて、何度も目の前で書いてみせたりと、文字や数を覚えていることを自慢げに話すことがあります。こういうときがまさに『教えどき』と言っていいかもしれません。
親はともすれば『わかったよ、うるさいわね』などと言ってしまいがちですが、むしろ『すごいね、じゃあ、これは書けるかな?』と声がけするなどして、少し上のレベルに挑戦できるようにしてあげるのがポイントです。
一方で、まだ文字や数を覚えることにあまり興味がないという子の場合、無理に教えようとしないほうがいいでしょう。かえって『勉強は嫌なもの』という印象を与えてしまうことになります。これからずっと勉強していかなくてはいけないのに、それではかわいそうですよね。
子どもがなかなか文字や数を覚えるのに集中してくれないという場合、まずひとつに、教えようとしていることがわからない、理解できていないということが考えられます。数を10数えるのがやっと、という子に、20+30は? なんて聞いても理解できません。
反対に、わかっていないように見えても、実はちょっとあわてんぼうで、同じ数を2回数えてしまったり、数え飛ばしているだけで、集中すればできるということもあります。
ですから、まずは子どもがどこまでわかっているのか、親がよく見極めることが大切です。そのうえで、その子がわかるところから、もしくは、そのちょっと上くらいのレベルから教えていくのが興味を持たせるポイントと言えるでしょう」
●遊びながら楽しく文字や数にふれる
まったく興味がない子の場合、本人の興味がわいてくるまで教えないでいると、入学まで覚えられないなどということはありませんか。
榊原 「子どもが興味を持つのを待つというよりも、興味が持てるように、親が子どもの好奇心を刺激してあげましょう。
これをやりなさいというのではなくて、子どもが楽しいと思えることに文字や数を使える状況を作っていくようにするとよいと思います。
具体的に言えば、時間があるときでいいので、親子で一緒に遊ぶこと。かるたやしりとりなど言葉遊び、トランプやすごろくなどはおすすめです。
たとえば、りんごという言葉は『り、ん、ご』という音の組み合わせでできているわけですが、しりとりで遊ぶことで『“りんご”だから、次は“ご”だね』と、音の区切りを意識するようになります。これは文字や言葉の理解の基礎につながります。
また、すごろくは駒を進めるときに『1、2、3、4…』と数える必要があるなど、遊びながら数になじんでいくことができます。
わざわざ道具を用意しなくても、散歩のときに数を数えながら歩いたり、『10数えたら交代ね』と、ルールを決めて遊んだりするだけもいいんです。とにかく、子どもが楽しんで文字や数に親しめる機会を積み重ねていくとよいと思います。
子どもの興味という点では、親自身が苦手意識を持たないことも大切。親が楽しんでいることは、子どもも興味を持って取り組むようになるものです。子どものお付き合いというのではなく、親も積極的に楽しめるもので遊びましょう」
昔ながらのシンプルなゲームなら、家族みんなで遊ぶことができますね。
榊原先生、ありがとうございました。
次回は、生活体験の中での文字や数の取り込み方についてうかがいます。
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榊原知美 さかきばら ともみ
東京学芸大学 国際教育センター准教授。専門は発達心理学・認知心理学。幼児の数概念の発達や子どもの知的発達に対する大人の支援などについて研究を行っている。『算数・理科を学ぶ子どもの発達心理学:文化・認知・学習』(ミネルヴァ書房)。
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