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学校・まなび
小学1年生 2015年8月21日の記事
給食の献立ができるまで[8/21]
《栄養士さんからの給食室だより 第4回》 栄養、味、季節、予算……献立作りには、たくさんの条件が!
こんにちは、学校給食の現役管理栄養士&経験者のグループ「おkayu」です。
私たちが綴るママノート版「給食室だより」。第4回目は、給食の献立づくりにスポットを当てました。ご家庭でも毎日の食事の献立を考えるのは、けっこう頭の痛いことではないでしょうか? 今回の記事をぜひ参考にしてください。
●見ていますか?「給食献立表・給食だより」
ほとんどの学校では、毎月25日前後に給食献立表が配布されているのではないかと思います。
ほとんどの場合、給食の献立はその学校の栄養士が考えていますが、区や市町村によって若干違うところもあります。「参考献立」とか「共通献立」「統一献立」といって、地区内で格差が出ないように、どの学校でも実施可能なお手本となる献立を、選出された栄養士の委員会が作成したり、輪番で作成したりするケースもあります。
献立を考えている栄養士としては、「冷蔵庫に貼って家族で見ています」「献立を見て、家の食事と重ならないようにしています。」「毎日献立表を見て、『今日の献立はこれなんだ、おいしそう!』と給食の話題で盛り上がります」といった(保護者の)声を聞くと、うれしくなるものです。
なぜって、献立は栄養士からのメッセージだからです。
●さまざまな制約と条件を考えながら作られる献立
栄養士は献立を考えるとき、いろいろな思いが頭の中をかけめぐっています。
まず基本は、給食が「生きた食教育(食育)の教材」となること。そのために、季節感(旬の味)、行事食、さまざまな食品・料理・味、郷土料理・世界の名物料理を伝えたいと考えます。
また、「栄養価が整い、安心安全に調理できる献立」であることも大切で、子どもたちが喜ぶもの、食べやすいものをと気を配ります。さらに、和・洋・中のバランスや、調理形態(揚げ物、焼き物、煮物、蒸し物、汁物、炒め物、和え物etc)、味のバランス、彩りなども考慮します。
加えて、さまざまな制約や条件も考慮して献立を考えなくてはなりません。
たとえば使用できる食器の種類や数、調理師さんの経験年数や作業能力などです。何より給食費の金額が決まっているので、価格にはこだわります。毎回、一食の単価を同じにすることはできませんが、メリハリをつけても、最終的に赤字にはならないように細心の注意を払います。
最近も、給食費の未納の問題が話題になりました。どうすればよいか、一概に言えない難しい問題ですが、未納が出ると給食が予算通りにできず、予定が狂うことがあるのも事実です。
難しいといえば、栄養価や食品構成にも制約があります。バランスよく栄養素を摂取するために、どの食品をどれくらい食べたらよいか、年齢別に、月単位で定められているのです。この数値目標(具体的な数値については「おkayu」HP をご覧ください)を満たしながら献立を考えなければならないのです。
●献立作りはどんなふうにするの?
ここからは、具体的な献立の作り方をちょっとご紹介します。
一食の献立では、主食+主菜+副菜+汁物の組み合わせを基本に考えます。和食の基本は、一汁三菜といわれます。この場合は副菜が2品か副菜と香の物などになります。
*主食(食事の中心となるもの、ご飯・パン・めん)
*主菜(主なおかずで、肉・魚・卵・豆腐などの料理)
*副菜(そのほかのおかずで、野菜・豆・きのこ・海藻が中心の料理)
*汁物(みそ汁やおすまし、スープ)
これに、給食では牛乳がほぼ毎回つきます。また、予算が許せば、果物やデザートをつけます。
献立は月ごとに考えることが多く、まず主食から決めていきます。週3~4日は米飯(ご飯)類、月に1~2回はめん(うどん、スパゲティ、焼きそばなど)にし、残りはパンにします。
主菜は、揚げ物・焼き物など調理形態が偏らないようにして考えます。洋風の主菜ならサラダ、和風ならおひたし……と、主菜が決まれば副菜もおのずと決まっていきます。一食の組み合わせごとに食器の数を考慮して、汁物やデザートを入れるかなど品数を決め、最終的に色の組み合わせや、味の組み合わせをチェックして修正します。
月全体の献立がざっと決まったら、週の中で主菜の材料(例えば魚)や味つけ(例えばトマト味などが)、作業面では調理形態に重複がないかどうかも確認します。
献立の例:プール開きの日の献立シーフードピラフ、牛乳、ひよこ豆のスープ、ポテトサラダ、マリンゼリー。
「プール開き」ということで、海をイメージして、えび、いか、ほたて貝柱などの海の幸を使ったシーフードピラフやさくらんぼをあしらったマリンブルーゼリーを組み合わせました。
献立の例:小正月の献立。小豆飯、牛乳、いものこ汁 さわらの照り焼き、ひじき煮。
1月15日の小正月には、小豆がゆや小豆めしをお供えして家族食べる習わしがあるので、小豆ごはんに体の温まる煮物などを付け合わせました。
このように、念入りに考えた献立でも、たまに一食の中のすべての料理にニンジンとタマネギが入っていたなんてことも。それぞれの料理の味が違うとはいえ、こんなときは、やはりこれは失敗したなと反省することしきりです。
昔は、給食をなんとか家庭の食事に近づけようと努力をしたものです。でもすでにお話ししたように、今では家庭からラブコールをいただくこともあるほど、給食が食事づくりのお手本となってきており、うれしい限りです。
まだまだ、食器や食べる場所の問題(食事室ではなく教室で食べるなど)食環境面については改善が必要ですが、子どもの心と体を育てる給食をめざしていきたいと思っています。
プロフィール
栄養教諭・給食の専門家がつくる同名の学校給食サイトを運営するメンバー。3名全員が学校栄養職員として東京都の公立小・中学校に勤務した経験を持つ。サイトは、給食作りについての情報や意見の交換、悩み相談やレシピ公開など、内容も多岐に渡り、学校給食関係者から高い支持を得ている。
「おkayu」 http://www.okayu.biz/index.php?FrontPage