土橋信明 つちはし のぶあき
神谷町耳鼻咽喉科院長。専門は小児耳鼻咽喉科、神経耳科。国立小児病院、国立成育医療センター耳鼻咽喉科医長などを経て現在に至る。
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生活・しつけ
小学1年生 2016年1月28日の記事
前回は子どもが扁桃炎を繰り返す場合の治療法について、神谷町耳鼻咽喉科院長の土橋信明先生にお話をうかがいました。しょっちゅう扁桃炎を繰り返す子は、手術で扁桃腺を摘出するのも選択肢のひとつ。今回は扁桃腺手術についてうかがいます。
●手術自体は安全性が高い
手術と聞くと、親としては心配になりますが、危険性はないのでしょうか?
土橋 「どんな手術であってもリスクがゼロということはありませんが、基本的に扁桃腺の摘出手術は、よほど特別なことが起きない限りは安全にできる手術と言えるでしょう。手術は基本的に全身麻酔で行ないます。
大人の場合は過去に炎症を繰り返していることで扁桃が摘出しにくくなっていることが多く、取った後の傷口のダメージが大きいことも少なくないのですが、それに比べれば、子どもは手術やその後の経過も良好な場合が多いようです。
ただし、ごくたまに手術後、数日から1週間くらいの間に摘出した後の傷口がぽっと開いて出血することがあります。これを後出血と言います。起きる確率は少ないのですが、出血があった場合は止血などの処置が必要になります。万が一そうなった場合を考えて、多くの場合、手術の入院期間は1週間程度に設定されています」
●扁桃腺を取っても免疫機能にはほとんど影響はない
扁桃腺を取ってしまえば、熱が出たりすることはなくなるのですか?
土橋 「扁桃腺を取ったことで体が丈夫になるかどうかは一概には言えませんが、かぜをひいても扁桃腺が腫れることがなくなる分、お子さんがつらい思いをすることは少なくなるでしょう。
よく『扁桃腺は免疫の組織だから、取ってしまうとかえって風邪をひきやすくなるのでは』という質問を受けることがあります。
たしかに、ごく年齢が低いときは体の免疫機能を扁桃腺に依存している部分が大きいのですが、小学校入学前後になると体全体の免疫機能が発達してくるので、扁桃腺の役割は小さくなります。また、何度も炎症を繰り返している扁桃腺は本来の機能を失って、むしろ『ばい菌の巣』になってしまっています。ですから摘出によって免疫力が落ちるのでは、などと心配する必要はありません。
以前には少し扁桃腺が大きいくらいでも、すぐに摘出していた時代がありました。その後その時代の反動もあって、できるだけ取らないような流れになっていましたが、年に何度も扁桃腺が腫れて苦しい思いをするのであれば、やはり手術も視野にいれて検討したほうがよいのではないかと思います。
ただ、摘出手術ということに関して言えば、現在は細菌感染を予防することが目的で行なわれているのは10%程度で、むしろ睡眠時無呼吸症候群の治療として行なわれることが多くなっています。左右の扁桃腺がのどの真ん中で触れるくらい大きい子は、鼻の奥にあるアデノイドという部分も大きい傾向があり、空気の通り道が狭くなっているため、夜寝ているときにいびきが激しく、いびきの途中で数秒から数十秒単位で呼吸が止まることがあります。放置しておくと子どもの健康や発育、昼間の集中力など、さまざまな面で悪影響が出てきます。
扁桃炎を繰り返す子が必ずしも睡眠時無呼吸症候群というわけではありませんが、心当たりがあれば、その改善ということも含めて手術を検討することをおすすめします」
子どもの体や学校生活のことをよく考えて判断することが大切ですね。
土橋先生、ありがとうございました。
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《子どもの扁桃炎 その1》 扁桃腺が腫れたら、どうすればいい?
《子どもの扁桃炎 その2》 扁桃腺が腫れやすいのはなぜ?
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