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学校・まなび
小学1年生 2015年7月10日の記事
給食を作る場所はどこ?[7/10]
《栄養士さんからの給食室だより 第3回》 給食はどこで作っているの?!
こんにちは、学校給食の現役管理栄養士&経験者のグループ「おkayu」です。
私たちが綴るママノート版「給食室だより」。第3回目は、給食作りの現場についてお話しします。
●給食が作られる場所は自治体によって違います
前回もご紹介したように、給食が作られる場所には2通りあります。
学校に給食室がある「自校調理方式」と、学校とは別の場所に給食室がある「給食センター方式」です。
多くの学校では、この2通りの方式のどちらかが採用されていますが、そのほかに「親子方式」といって「親」の学校が「子」の学校の分まで給食を作る方式もあります。
どの方式が採用されているかは、自治体によって違ってきます。お子さんの通っている学校の方式はどれでしょうか?
自校調理方式の場合、給食室は学校の敷地内で、1階の、道路に面した位置にあることがほとんどです。それは、給食物資(食材)が毎日納品されるためで、業者さんが車から物資を給食室の「前室」と呼ばれる部屋に運びこめるような造りになっているからです。
●給食センターでは、10,000名分以上の給食が作れるところも
センター方式の場合、当然ながら給食を調理する給食室は、学校給食センターの中にあります。各自治体により学校給食センター(以下センター)の数は違いますが、当該地区の近くに建設されています。規模は、小学校、中学校、幼稚園、保育園など4~25校の給食、人数にして約1,200~14,000名分を調理できる施設となっています。
各自冶体のホームページには、学校や給食センターの紹介もあります。お子さんが通う学校のホームページを見て調べることもできるので、最新施設のセンターはどうなっているのか、ちょっとのぞいてみてもいいかもしれませんね。
●センター給食が始まった理由
自校方式とセンター方式、なぜ地域によってバラつきがあるのでしょうか。
そもそも当初は、給食を行なっている学校のほとんどに給食室がありました。それがセンター方式に変わった一番大きな理由は、経費節減です。
何校分もの給食室を1カ所に集めることにより、人員を削減でき、施設運営費などを軽減することができます。さらに大量調理が可能になるので、材料も大量購入になり、安定した状態で物資価格を安く抑えられます。食材料費が安くなるということは、給食費が安くなることにつながります。保護者のみなさんにとっては、助かりますよね。
また、給食室の老朽化を機に、経費を節約するため、センター化に踏み切ったというケースもあります。
もう一つの理由は、中学校給食が導入されたことです。
これまで給食を実施していない地域が給食を導入することになり、学校に給食室を建設することになりました。しかし、給食室を作るには、様々な設置条件の障害があったため、給食室を学校に作れない所をまとめて、隣接地に建設するという発想に結びついたそうです。
●給食センターは良いことばかり……?
栄養士として見てみると、自校方式に比べて給食センターでの給食作りにはいくつか難しい面もあります。
一番の問題は、できあがった給食が教室に届くまでの時間です。自校方式では、できあがってから各階の教室に届ける時間は40分ぐらいです。一方、センターの場合、給食をコンテナに入れ、車で学校の配膳室へ運び、そこから各教室へ届けるので2時間~2時間半位かかってしまいます。
この時間、密閉された容器に詰められた揚げ物はどうなるでしょうか。保温性の高い食缶に入れられたスープは、余熱でさらに煮えてしまうかもしれません。昔、この時間も調理時間と考えて作っていると話していた調理師さんがいたのを思い出しました。
次にあげられるのは、大量調理のため、できあがりの見た目があまりよくないということ。攪拌(かくはん)機がついた回転釜で1,000名分の調理をすることもあるので、炒めものもスープ状に仕上がってしまったり、野菜の形状がきちんと残らないということも起きてきます。
私たちの勤務していた東京都にも、数は少ないのですが給食センターがあります。今から30年ほど前、1日に1万食を作れるというセンターが新しくできたとき、見学に行ったことがあります。
大規模な給食センターの工場のような光景に驚き、食事を作っている現場に見えないこと、給食室でやってきたきめの細かい配慮が生かされないということに複雑な思いを抱く栄養士さんも多かったようです。
今では、さまざまな取り組みをしている全国の給食センターのホームページを見るにつけ、時代の進歩を喜ばずにはいられません。
けれど私たち栄養士としては、やはり「食べること」は、決して合理化になじまないと思いますし、大事なのは節約よりも「いかに手をかけるか」、「本物の味をどう伝えるか」だと感じています。みなさんはどう思われるでしょうか。
もちろん、センターの栄養士・調理員の方々は、いろいろな制約の中で、できる限りの努力をして子どもが喜ぶ美味しくて安全な給食づくりをされています。ご理解とご協力、そして応援をお願いします。
次回は、献立作りについてお話しします。
プロフィール
栄 養教諭・給食の専門家がつくる同名の学校給食サイトを運営するメンバー。3名全員が学校栄養職員として東京都の公立小・中学校に勤務した経験を持つ。サイ トは、給食作りについての情報や意見の交換、悩み相談やレシピ公開など、内容も多岐に渡り、学校給食関係者から高い支持を得ている。