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学校・まなび
小学1年生 2015年6月12日の記事
学校給食の現場をのぞいてみよう[6/12]
《栄養士さんからの給食室だより 第2回》 毎日、朝早くから給食づくりは始まります!
こんにちは、学校給食の現役管理栄養士&経験者のグループ「おkayu」です。私たちが綴るママノート版「給食室だより」。第2回目は、毎日の給食作りの現場や作り手についてお話しします。
●暑い季節の給食室は蒸し風呂のよう
ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、6月は「食育月間」です。
学校では、この食育月間に合わせて、さまざまな食育活動が行われます。「食に関する指導」という授業が行われるほか、低学年では、グリンピースやソラマメのさやむき、トウモロコシの皮むきなどが生活科の生活体験として実施されることもあります。給食づくりの一端に携わることで、「食べる」ことに関心を持ち、作ってくれる人への感謝の気持ちを育てる場ともなっています。
さて、その毎日の「給食」は、誰が作っているかわかりますか? そう、「調理員」さんです。ところによっては、給食員とか給食主事、作業員などいろいろな呼び方があり、調理師や施設調理師などの資格を持っている人もいます。地方公務員(区や市の正規職員・非常勤職員)と調理委託による民間委託会社の社員さんやパートさんです。
学校に行く機会があったら、ぜひ給食室を窓越しにのぞいて見てください。白衣・白帽・マスクをつけた調理員さんたちが目まぐるしく働いているはずです。
とはいっても、学校以外の場所で何校分もまとめて作っている「給食センター方式」では、学校に給食室はありません。このことは次回、またお話しする予定です。
今回は、学校の中に給食室がある「自校調理方式」を例に、調理員さんの作業を見てみましょう。
調理員さんの一日は、朝7時30分ごろから始まります。給食室内外の清掃に始まって、野菜の洗浄、だし取り、下調理(野菜切りなど)、煮る・焼く・揚げるなどの調理や炊飯、配食、運搬と一連の作業を午後12時くらいまでに行います。温かいものは温かく、冷たいものは冷たく、仕上げてから2時間以内に食べられるよう、給食時間に合わせて作るのが基本です。
午後は食器や給食運搬用の食缶、バット、ボウルなどの洗浄と給食室の清掃・消毒を行います。これからの季節、エアコンが設置されていない調理室は蒸し風呂のような暑さになります。マスクを取ることはできないので、息苦しさもひとしおですが、子どもたちの笑顔を思い浮かべて、おいしい給食づくりに毎日励んでいます。
給食は、和・洋・中様々な料理が登場します。1カ月間、同じ料理はほとんど出ません。レシピを見ながら作るとはいえ、毎日違う料理を作る調理員さん、さすがですね。
▲野菜を切る作業
▲回転釜で煮ている (画像2)
●栄養計算だけじゃない、栄養士さんの仕事
そんな給食の献立は、栄養士さんが考えます。栄養士または管理栄養士の資格を持っていて、都道府県によってその呼び方はさまざまで、栄養教諭、学校栄養職員、栄養技師、栄養主事などと呼ばれます。私たち「おkayu」のメンバーもみなこのような資格を持っています。
「栄養士」というと、栄養計算が仕事の中心と思われる方も多いでしょうが、旬の味、和食の良さ、世界の名物料理、いろいろな食品、食事作法など、給食が「食教育の教材」となるよう考えるのも栄養士の重要な仕事です。
1年の食事回数を1日3回として計算すると、365日で1095回になりますが、このうち給食が占める回数は、約190回。家庭での食事回数のたった5分の1なのです。この190回の給食で、何を伝えようかと、栄養士さんたちは悩みながら献立作りをしています。
また、経験年数によっても違いますが、栄養士さんも調理に携わり、調理指導や味付けの最終決定や衛生管理のための衛生指導なども行ないます。
6月は食中毒指導月間でもありますが、給食室の衛生管理には、さまざまなルールがあります。栄養士・調理員とも月2回の細菌検査(検便)をしているほか、毎日、給食室の衛生チェックと調理作業工程の衛生管理を励行しています。これらは、日報という形で記録されてもいるのですよ。
●校長先生が味見をして給食が完成!
そろそろ調理が終わる時間です。ちょっと給食室をのぞいてみましょう。
大きな回転釜が窓際にあります。お釜のふたが開きました、湯気の中から吉野汁が見えます。炊飯器では炊き込みご飯が、オーブンではお魚が焼けているようです。焼きあがったお魚を、調理員さんたちがバットに数え入れています。保冷庫からは、ボウルに入った胡麻あえが出てきました。
栄養士さんが持っているお盆に、次々とお料理が食器に配られ、運ばれてきます。味見をするのかな、それにしては量が多いようです。あれっ、栄養士さん外に出ていきましたよ。まだ給食時間ではないのですが、どこへ行くのでしょう。校長室に給食を持って入っていきました。ついていってみると、こんな光景が。
栄養士「校長先生、給食をお持ちしました、検食をお願いいたします。」
校長先生「ありがとう。きょうは何かな。おっ、和食ですね。さっそくいただきます。」
これは「検食」といって、子どもたちへ給食を出す前に1人分の給食を食べることをいいます。味・量・出来上がり状態、衛生面などをチェックし、検食票に記入が終わると「GO」サインが出ます。そこではじめて、給食配食が始まるというわけです。毒見というのではなく、最終審査なのです。検食を行うのは、学校の最高責任者である校長先生です。
▲この日のは黒豆と梅干しの果肉を一緒に炊いたあじさいご飯。年に一度、あじさいの時期に登場するメニュー。汁物のとろみをつけた吉野汁。吉野が葛粉の産地であることから、この名前で呼ばれます。
検食がすむと、クラスごとに計量配分された料理が、次々とワゴンに乗せられていきます。最後に冷蔵庫から、牛乳と副菜の「胡麻あえ」が置かれて出発進行! リフトで1台ずつ各階の教室に届けられます。今日も無事に給食ができあがり、給食室一同ホッとする瞬間です。
次回は、今回も少しだけ触れた「給食センター」など、給食を作る場所について取り上げます。なお、今回取り上げた食育については、「おkayu」のHPで詳しくご紹介しています。ぜひご覧ください。