宮野孝一(みやの たかかず)
平成10年、みやのこどもクリニックを開業、院長に就任。
医学博士、小児科学会認定専門医、日本アレルギー学会認定医。
地域の小児医療に務めながら、現在は昭和大学医学部兼任講師として後輩の指導にもあたる。
『赤ちゃんと子どもの医学事典』(ナツメ社)、『てるてる天使の育児百科 ハッピー・ベビーケア』(学研)など監修書籍多数。
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生活・しつけ
年長 2017年6月7日の記事
5~6歳のママの悩みのひとつである、子どもの「おねしょ(夜尿)」。前回は、おねしょについての詳しい説明や子どもへの声がけ方について、みやのこどもクリニックの宮野孝一先生にお話伺いました。
今回は、病院を受診して「夜尿症」と診断された場合の原因や治療法について教えていただきます。
そもそも「夜尿症」とは、どんな病気、症状なのでしょうか?
「夜尿症には、大きくわけて次の3つのタイプがあります。
1) 多尿型(多量遺尿型)
文字通り、尿が多いため漏らしてしまいます。
夜寝ている間は、抗利尿ホルモンの分泌により尿は濃縮されて量を抑えられています。その抗利尿ホルモンの分泌がうまくいかないため、尿量が調節できずおねしょをしてしまうのです。多尿型は、濃縮されないうすいオシッコをするのが特徴です。
2) 膀胱未熟型(排尿機能未熟型)
膀胱の容量自体が少ないため、オシッコを溜めておくことができず、漏らしてしまいます。
3) 上記2つの混合型
多尿型と膀胱未熟型の特徴を合わせ持つタイプです。
それぞれ、問診や夜尿の記録、尿検査などから診断されます」(宮野先生)
夜尿症と診断された場合、どのような治療を行うのですか?
「どのタイプも、まずは生活指導が治療の中心となります。
夕方から就寝までの水分摂取量を制限する、甘いものや味の濃いものを食べると喉が渇いて水分を摂りたくなるため食事を薄味にする、そして規則正しい生活を送るように指導します。
また、冷えると膀胱の容量が少なくなりますので、冷えの症状がある場合は、夜ゆっくりお風呂に入る、布団を暖める、腹巻をするなど、体を温める工夫も必要になります。
1カ月ほどの生活指導で、夜尿症と診断された子どもの約1割から2割程度は治りますので、ぜひご家庭でも気をつけてみてください。
学童期以降の場合は、相談に応じて、抗利尿ホルモンの分泌を促す飲み薬などを処方する場合もあります。また、中には泌尿器系の病気が隠れているケースもありますので、その場合は専門の医療機関をご紹介します」(同)
普段から家庭でできるおねしょ対策があれば、ぜひ教えてください。
「夜尿症の生活指導の話がヒントになると思いますが、家庭でも夜間の水分摂取に気をつけるとか、また、おねしょをしても大目に見てあげると言ったような、パパやママが気持ちに余裕を持つことも大切だと思います。
よく、おねしょの相談に対しては “起こさない、焦らない、怒らない” が大切だと言われます。
起こしてまでオシッコに行かせる必要もありませんし、叱る必要もありません。いつかは、オムツを卒業できるはずですから、気楽に構えましょう。
病気ではないかと心配しすぎていろいろな病院を転々と受診するようなことは、子どもを不安にさせますし、逆効果になることもあるのでおすすめしません。
また、兄弟がいる場合、兄弟で比べてしまうのも良くないと思います。
特に、男の子のほうがおねしょをする確率が高いため、妹が先にオムツを卒業することもあります。それを、妹に『お兄ちゃん、まだおねしょしてる!』などと言われたら、兄としてのプライドが傷ついてしまいます。
そんなときは、パパの出番です。『男の子はおねしょしやすいんだよ。パパもそうだったぞ~』と言って、安心させてあげましょう」(同)
おねしょ治療に適した季節などはありますか?
「冬場はどうしても冷えるので、おねしょの回数が増えるのも仕方ないことです。実際、おねしょの治療も、冬場は効果があまり出ないため、行わないことが多いです。
春からのあたたかい季節のほうが効果が出やすいため、治療をお考えの場合は、これからの季節が始めやすいと思います」(同)
そのほか、おねしょで悩む子どもを持つ家族へのアドバイスをお願いします。
「おねしょ・夜尿症は生活習慣の改善が第一とお話しましたが、子どもだけ薄味の食事にしたり、水分を極端に控えることはとても大変です。できれば家族全員で同じように生活習慣を改善して、『一緒にがんばろう』と子どもに接してあげてください。
そして、子どもが自信を持てるような声がけを意識的にしてあげると、結果的に早くおねしょが治ることがあります。お子さんの気持ちを尊重しながら、不安を取り除いてあげてくださいね」(同)
おねしょや夜尿症は、成長とともに治っていくことも多く、心配しすぎることはないという宮野先生のお話、とても心強いですね。もし、子どもがおねしょをしてしまってもあまり悩まずに、 大らかな気持ちで受け止めましょう。
(取材・執筆:水谷映美)
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宮野孝一(みやの たかかず)
平成10年、みやのこどもクリニックを開業、院長に就任。
医学博士、小児科学会認定専門医、日本アレルギー学会認定医。
地域の小児医療に務めながら、現在は昭和大学医学部兼任講師として後輩の指導にもあたる。
『赤ちゃんと子どもの医学事典』(ナツメ社)、『てるてる天使の育児百科 ハッピー・ベビーケア』(学研)など監修書籍多数。
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