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学校・まなび
小学1年生 2015年5月15日の記事
食物アレルギー、家庭で早めの「発見」を[5/15]
《栄養士さんからの給食室だより 第1回》 初めての食材は、事前に家庭で食べてみよう
こんにちは。私たちは、学校給食に携わるすべての人たちを対象にしたwebサイト「おkayu」の運営メンバーです。学校給食の現役管理栄養士と経験者3人で活動しています。
学校給食は、今学校に通う子どもだけでなく、ほとんどのお父さんやお母さんも、一度は食べたことがあるのではないでしょうか。
今月から月1回、学校給食について知っておきたい情報や意外な豆知識、給食の歴史など作り手側からのメッセージをお届けしていきたいと思います。
●食物アレルギー、これから出る可能性も……?
第1回目は「食物アレルギー」についてのお話です。
食物アレルギーのあるお子さんをお持ちの保護者の方は、小学校の給食での対応がとても気がかりだと思います。給食を作る側としても、ちょっとした手違いが命に関わることになるため、食物アレルギーについてはかなり慎重に取り組んでいます。
アレルギー対応は、文部科学省や、各自治体から対応マニュアルが出ており、それに基づき、各学校で対応申請・面談・事前相互報告・給食実施といった流れを経て、具体的な対応策を講じていきます。
主な対応は、アレルゲンを取り除いた食事、いわゆるアレルゲン除去食が中心ですが、万が一、食べてしまった場合を想定しての緊急処置計画や対応訓練なども行われています。過去の悲しい結末となった事故を教訓に、まずは、給食提供時のチェック体制と誤食してしまったときの早急な処置・対応といった校内の危機管理体制の徹底が、最悪の事態を回避する手立てとなります。心配な方は、学校にご相談ください。
では、「うちの子は食物アレルギーがないから大丈夫」かというと、実は安心はできません。驚かすつもりはありませんが、花粉症のように、食物アレルギーもいつ表れるかわからないのです。
以前、こんなことがありました。
給食を食べて、すぐ出張に出かけた私は、出張先に着くや否や校内放送で電話が入っていると呼び出されました。電話口に出ると、開口一番、金切り声で「アレルギーのチェックをしていなかったのですか。1年生の子がアナフィラキシーショックを起こして、救急車で運ばれたのですよ」と、区役所の給食係から告げられたのです。
アナフィラキシーは、生死にかかわる重篤な症状です。私は頭の中が真っ白になりました。一方的に非難され、返す言葉もなく後悔ばかりが先に立ちました。職場に急いで戻り、ことの顛末を聞きましたが、届けの出ているアレルギー児ではありませんでしたので、とにかく、付き添って行った養護の先生の連絡を待ちました。
結局、症状は治まり最悪の事態は避けることができ、ほっとしました。翌日知らされたアレルギー反応検査結果によると、その日に食べた給食材料にはアレルゲンは見当たらず、唯一考えられたのが動物の毛でした。つまり給食ではなく、校庭で何かのはずみで動物の毛に触れたではないかというのです。保護者の方のお話では、今までこのような症状が出たことはなかったということで、ひどく驚いたそうです。
●家庭でいろいろな食材を食べる習慣を
このことがあり、いろいろと調べてわかったのですが、家庭で食べたことのない食品を給食で初めて食べるという児童が多く、それが学校でのアレルギー発症につながりやすいようです。
そこでママノートをご覧になっている皆さんにもお願いです。給食献立表が配られたら、使用食材をチェックしていただき、まだ食べさせていない食品があったときは、できるだけ事前に家庭で食べられる機会を作ってほしいということです。そうすることで、その食べ物が、子どもの体に合うか合わないかを確認できるだけでなく、いろいろな食品を口にできるようになります。
学童期は味覚の土台を広げる時期です。土台が広いと自ずと味覚も広くなり、いろいろな食品や料理・味を楽しむ心も育っていくことでしょう。
偏食の是正や給食時間を楽しく過ごすためにも、ぜひ「初めて」にチャレンジを!
★学校ではこうしてます!〜アレルギー対応の一例〜
アレルギー対応については、学校によってさまざまな取り組みがされています。今回ご紹介するのは、「まず本人が自分で食べるものを確認すること」を基本として、人まかせにせず、子ども自身がアレルギー対応への自覚を持てるようにと取り組んだ事例です。給食室でのアレルギー対応児の出席確認も兼ねていました。
アレルギーのある子は、毎朝、給食室に挨拶に行き、その日の献立と対応について確認します。
子どもの「きょうは、何がだめですか?」という質問に「かき玉汁の卵を抜くので、野菜スープになるからね」と言うようなときもあれば、「サバがだめなので、家から食べられる魚を持ってきました」「はあい。預かっておくね」という日もあります。
上の写真は普通食。下はアレルギー対応食の食器。以前は、特別扱いの印象を与えないよう、アレルギー対応食と普通食で同じ食器を使用していたのですが、誤食する危険性も高いため、最近は、色つきの食器にするなど、だれが見てもアレルギー対応食とわかるようにしている学校が増えてきました。
次回は、「給食現場をのぞいてみよう」と題して、給食作りに携わる人たちについて迫ります。お楽しみに。
プロフィール
栄養教諭・給食の専門家がつくる同名の学校給食サイトを運営するメンバー。3名全員が学校栄養職員として東京都の公立小・中学校に勤務した経験を持つ。サイトは、給食作りについての情報や意見の交換、悩み相談やレシピ公開など、内容も多岐に渡り、学校給食関係者から高い支持を得ている。
「おkayu」 http://www.okayu.biz/index.php?FrontPage