神奈川歯科大学大学院歯学研究科、口腔統合医療学講座小児歯科学分野教授。神奈川歯科大学付属病院では小児歯科の診療科長を務めるほか、矯正・小児系歯学の研究などを行っている。
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生活・しつけ
年長 2019年6月28日の記事
小学校入学前後の子どもたちは目をみはるような成長を見せるもの。なかでも「古いものが抜けて新しいものが生えてくる」という劇的な変化が訪れる「歯」の成長については、特に気になるところです。子どもの歯はいつごろ生え代わりが始まり、どのようなことに気をつけてあげればよいのでしょうか。歯の生え代わりについて、子どもの歯に詳しい神奈川歯科大学大学院の木本茂成先生に聞きました。
はじめに、子どもの歯の生え代わり時期を教えてください。
「まず乳歯ですが、おおよそ生後3か月から1年の間に、下顎の前歯から生え始めます。多くの場合上下10本ずつ、あわせて20本の乳歯が2歳半から3歳ごろに生え揃います。
永久歯への生え代わりの開始は6歳ごろ。だいたいの場合は下顎の前歯(中切歯)から始まり、下顎ではその次に6歳臼歯が生えてきて、その後は概ね前歯から奥歯に向かって順番に生え代わっていきます。また、上顎の中では、はじめに第一大臼歯(6歳臼歯)が生えることが多く、その後、7〜8歳ぐらいに1番目と2番目の前歯が生え代わります。前から3番目の糸切り歯(犬歯)は、前から4番目の奥歯(第一小臼歯)の後に生えてきます。
乳歯のとき一番奥にあった奥歯『第二乳臼歯』まで上下とも生え代わるのが、11〜12歳頃になりますが、さらにその奥に『6歳臼歯(第一大臼歯)』『12歳臼歯(第二大臼歯)』が生えてきて、14〜15歳頃に上下28本の永久歯の歯並びが完成します。また、人によっては、高校生以降になると、さらに奥に『親知らず(第三大臼歯)』が生えてきます」(木本先生)
ここで覚えておきたいのは、生え代わりの時期にはかなりの個人差があるということ。ここまでに出てきた年齢や生える順番についてもあくまで目安であり、特に年齢については1年ぐらいのずれは普通にみられるそうですから、他の子と比べて遅れているけど…と過度に心配する必要はないようです。
では、生え代わりの時期に気をつけるべきことを教えてください。
「永久歯がきれいに生えてくるかどうか、歯並びが気になる方も多いと思います。永久歯の歯並びを良くするためには、乳歯が生え揃う3歳頃から、様々な種類の食品を良く噛んで食べる経験がとても大切になります。
それも、ただ硬いものを噛む、噛み切れないものをひたすら噛み続けることばかりが良いわけではありません。柔らかいもの、粘着質なもの、繊維を噛み切る必要があるものなど、とにかくさまざまな性質のものを幅広く経験させることが重要です」(同)
歯並びが心配な場合は、できれば乳歯が生え揃ったら一度、小児歯科専門医に診てもらうといいそうです。また、歯の生え代わる時期のトラブルとしては、やっぱりむし歯も気になります。
「むし歯の原因菌となる『ミュータンス連鎖球菌』は、多くの子どもの口内にある常在菌です。この菌は食べかすなどに含まれる糖質を分解し、プラーク(細菌の塊)となって増殖し、その際に酸を作ります。一方、歯の表面はとても硬いエナメル質でできていますが、酸には弱い特性があるため、その酸で溶かされ穴が空く、これがむし歯です。
乳歯は永久歯に比べてエナメル質が柔らかいため、むし歯になりやすいと言えます。『どうせ永久歯に生え代わるから…』といって乳歯のむし歯を放置していると、永久歯の歯の質や歯並びにまで悪い影響を及ぼすことがあります。
また、永久歯であっても生えたばかりの頃は乳歯のように歯の質が弱いので、同じくむし歯になりやすい性質があります。生え始めの永久歯はもちろん、歯ブラシが届きにくい奥歯の奥まで丁寧に仕上げ磨きして、知らぬ間にむし歯ができていないか気をつけて見てあげましょう」(同)
新しい永久歯だけでなく、いずれは生え代わる乳歯も大切にしなくてはいけないのですね。歯の生え代わり時期は念入りに親が仕上げ磨きをしてあげましょう。
ところで、生え代わりの際に乳歯がぐらついたまま、なかなか抜けないということもあるかと思います。こうした場合は早く抜いてしまった方が、下から生えてくる永久歯のためになるのでしょうか?
「乳歯が生え揃う前に、歯茎の中では永久歯がどんどん成長しています。そして、顎の中での永久歯の成長にともない、乳歯は根元が徐々に溶けて短くなり、ぐらつくようになるのです。そのため、生え代わりの時期であれば、基本的に乳歯は自然に抜けるまで放っておいて構いません。
ただし、乳歯が抜けないうちに永久歯が歯茎から見えてきた場合は別です。そのままでは永久歯が健全に生えることを阻害するため、歯科医院で乳歯を抜く必要があります。そうした乳歯は、本来は根元が溶けるべきところ一部が溶けずに残っていることもあるため、下手に抜くと歯の根が折れて歯茎の中に残ってしまうこともあります。きちんと歯科医に抜いてもらうようにしましょう」(同)
子どもの口の中でこれから一生を共にすることになる永久歯。適切なケアを心がけて大切にしてあげたいですね。
(取材・執筆:宇都宮薫)
神奈川歯科大学大学院歯学研究科、口腔統合医療学講座小児歯科学分野教授。神奈川歯科大学付属病院では小児歯科の診療科長を務めるほか、矯正・小児系歯学の研究などを行っている。
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