神奈川歯科大学大学院歯学研究科、口腔統合医療学講座小児歯科学分野教授。神奈川歯科大学付属病院では小児歯科の診療科長を務めるほか、矯正・小児系歯学の研究などを行っている。
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生活・しつけ
年長 2019年6月26日の記事
園児から小学生へと変わるのと、ちょうど同じ時期。子どもの身体には大きな変化が訪れます。その一つが「歯」の変化。前歯から始まる歯の生え代わりもそうですが、奥歯の方では、乳歯の後ろに「6歳臼歯」というものが生えてきます。そこで、子どもの歯に詳しい、神奈川歯科大学大学院の木本茂成先生に「6歳臼歯」の特徴とケアについてお話を聞きました。
小学校就学時期に生えてくる「6歳臼歯」。奥の方にあるので口の中を覗かないと気づきにくいようですが、これは一体どのような歯なのでしょうか?
「6歳ごろに生えることから『6歳臼歯(第一大臼歯)』と呼ばれるこの歯は、乳歯の一番奥の歯(第二乳臼歯)のさらに奥から生えてくる、とても大切な歯。乳歯が抜けて生え代わるのではなく、初めから永久歯として生えてきます」(木本先生)
この時期の子どもは前歯の生え代わりに注目がいきがちですが、奥の方ではそんなことが起きているんですね。では、なぜその6歳臼歯は大切だと言われるのでしょうか?
「6歳臼歯は最も早く生え変わる下顎の中切歯(前歯)に次いで、その直後に生える永久歯で、噛む力も歯の中で一番強いものになります。そのため、後の噛み合わせや歯並びに大きな影響をもたらすのです。この歯が正しく生えないと噛み合わせ、歯並びが正常なものになりません。6歳臼歯の異常はあごの関節に影響を与えたり、身体全体の発育にも影響することがあるため、特に大切な歯とされているのです」(同)
歯並びや、あごの関節にも影響することがある6歳臼歯。奥歯の奥で気づきにくいということなので、しっかり生えてきているかどうか注意して見てあげたいですね。
ところで、6歳臼歯は初めから永久歯で生えてくるということですが、乳歯と永久歯には何か違いがあるのでしょうか?
「乳歯も永久歯も歯の仕組みはほぼ変わりません。役割として、乳歯は乳以外の固形の食物を摂取する機能を獲得するために早く生えてくるもので、あごの大きさに合わせた小さいサイズで生えてきます。だいたい生後6か月以降に下の前歯から生えはじめ、2歳半から3歳頃に上下10本ずつ、合計20本が生え揃うことが多いですね。
一方、成長にともなってあごは大きくなり、噛む力も強くなるので、それに合ったより大きく丈夫な歯が必要となります。そこで、乳歯と入れ代わって生えてくるのが永久歯なのです。永久歯はエナメル質や象牙質の厚みが乳歯よりも厚く、ほぼ2倍となっているために丈夫。さらに歯根部も深く根ざしており、成長にともなって強くなるあごの力にも対応しています」(同)
永久歯は乳歯より丈夫といっても、生えたてからしばらくはまだ“未完成”であり、歯根部に至っては、生え始めから3~4年経たないと完成しないとのこと。
組織がまだ完全には強くなっていないため、この期間は特にむし歯になりやすい時期。めやすとしては、「6歳臼歯が乳歯の奥歯と同じ高さまで生えて噛み合うようになる8歳ころまでは、まだまだ保護者の仕上げ磨きが必要」と木本先生。また、それ以降でも、きれいに磨けているか、歯磨き後のチェックは必要とのことです。
では、6歳臼歯が生えてきたら、どのようなことに気をつけるべきなのでしょうか?
「6歳臼歯はそれまでに生えていた乳歯の奥歯のさらに後ろに生えるため、歯ブラシが届きにくい面があります。しかも完全に歯が露出するまでに、歯茎がかぶさっている状態が長く続くため、汚れが溜まりやすく、周囲の炎症を招きがちです。噛み合わせの溝が深いことからも食べかすが詰まりやすい上、永久歯と言ってもしばらくは表面もまだ柔らかいため、むし歯になりやすいという特徴があります。
永久歯のエナメル質は生えたあとに唾液中のミネラルが浸透し、徐々に強くなっていくものですので、生えたばかりの6歳臼歯周辺の仕上げ磨きは、特に念入りに行ってあげてください」(同)
6歳というとちょうど小学校就学の時期にあたるため、「もう小学生なのだから自分で磨きなさい」と子どもに任せる保護者の方も多いもの。しかし、6歳臼歯は全ての歯の中でもっとも虫歯のリスクが高い歯であるため、木本先生は6歳臼歯が成長し、上下で噛み合うようになる8歳までは、親が仕上げ磨きをすることを推奨されていました。
なお、臼歯の噛み合わせの溝は特に食べかすが詰まりやすい箇所となっています。そこで、その深さや形、各個人の磨き残しの状況を考慮して、あらかじめシーラント(歯科用の樹脂)で埋める場合や、むし歯予防のフッ素塗布などの処置を行うこともあるそうです。どちらも保険が適用される場合もあるため、6歳臼歯が生えたらとにかく一度、小児歯科医に診てもらうのが良いでしょうね。
(取材・執筆:宇都宮薫)
神奈川歯科大学大学院歯学研究科、口腔統合医療学講座小児歯科学分野教授。神奈川歯科大学付属病院では小児歯科の診療科長を務めるほか、矯正・小児系歯学の研究などを行っている。
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