特定非営利活動法人 CEセンター理事長。学校心理士SV、公認心理師、算数教科書・指導書(学校図書)執筆ほか、全国の保育園・幼稚園・小中学校を訪問し、心理・発達の立場からさまざまな取り組みをしている。また、CEセンターでは勉強が苦手な子どもたちに向けた通信教材『まいぷり まいど』を販売、メール相談なども行っており、困難を抱えながら学校生活を送っている子どもと保護者に寄り添ったサービスを提供している。
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学校・まなび
小学1年生 2019年4月15日の記事
1年生になると時計を読む勉強が始まりますが、最近はデジタル時計が多く、文字盤が読めない子も増えているようです。また、「30分」や「1時間」といった時間の感覚をどう子どもに教えたらよいのかも、なかなか難しいですよね。そこで今回は、時計の読み方のコツや時間感覚の身につけ方について、特定非営利活動法人CEセンター・理事長の野田弘一さんに教えていただきました。
まずは、小学校での“時計”の学習が、どのように進むのかを教えてください。
「時計が読めることはもちろん、時間の感覚を持つことは『社会生活を営む上で必要なこと』であり、小学校でも1年生から少しずつ身につけられるようなカリキュラムが組まれています。具体的には、
・1年生…『8時』『12時半』『4時57分』といった『時計の読み方』を学ぶ
・2年生…60分が1時間であり、62分は『1時間2分』に換算できること、午前と午後の意味、1日が24時間であることを学ぶ
・3年生…『8時40分に出発して30分歩くと、何時何分になる?』といった内容に進む
・4年生以降…ほかの単元の中で時間や時刻を扱う
というようにステップを踏んで、日常生活でも活用できるような内容にまで発展していきます」(野田さん)
時計が読めるようになると、日常生活にも多くのメリットがあると野田さんは続けます。
「『朝9時に家を出発するから、8時に起きよう』や『6時半から好きなテレビ番組が始まるから、6時には帰宅しよう』など、子どもが自分で見通しをもって行動できるようになります。ほかにも、時計や時間の知識があれば『今日は3時に集合して公園で遊ぼう』と友達と約束することもできますよね」(同)
目的のために時間を意識して計画・行動すること。そのために必要な“時計”の理解は、子どもの自立への第一歩なのですね。
では、「時計の読み方」を習得させるために、子どもにどのように教えていけばいいでしょうか。
「時計は1年生の2学期から習い始めますが、1年生の算数の中でも教えるのが難しい単元のひとつです。具体的には、短針が7時と8時の間にあるときに「7時〇分」なのか「8時〇分」なのか混乱してしまうこと。また、時計は短針を読んでその値を覚えた状態のまま長針を読むわけですが、長針の目盛りを確かめているうちに短針の値がいくつだったか忘れてしまうことなどがネックになるようです。
こうした時計の読みの難しさを意識して、最近の教科書は単元を二つに分けるなど工夫がされています。最初の単元で「7時」や「7時半」のような比較的簡単なものを教え、繰り上がり算などの単元が終わってから「7時23分」といった1分刻みの読み方を学習するのです。なので、基本的には、お母さんが子どもに時計の読み方を教える必要はほぼないと考えます」(同)
そういうことなら、少し安心できます。
「ただそうは言っても、授業についていけなくなったらどうしようと不安になる方もいるでしょう。時計を読むことの難しさは、突き詰めると長針の読み取りに苦労することによるもの。そこで、もしもお子さんが次のような様子に当てはまる場合は、2学期に向けて準備をしてもいいかもしれません。
1.時計に対して、なかなか興味や関心を示さない
このケースの子どもは、長針が動いていることや、規則的に目盛りがあることに気が付かないままになっていることが多いようです。いきなり時計を使った生活を強いてしまうと、子どもは戸惑ってしまうかもしれないので、まずは時計の長針を理解できるような働きかけをしてみましょう。
たとえば、5分刻みに動物などのシールを貼り、数字の代わりに『キリン』や『ゾウ』などで時刻を表現します。『キリンさんのところだから、お風呂入ろうね』といった具合です。そして『キリン』でお風呂に入り、出てきたら長針が『ゾウ』になっていた、この体験により『時間の感覚を身につける』ことにも繋がります。
2. 数字を飛ばし読みするなど、並んでいるものを目で追うことが苦手
あまり知られていませんが、眼球をスムーズに動かすことが苦手なお子さんもいます。横や縦に並んでいる文字や数字を目で追って読むのが苦手だったり、目の前にあるたくさんのモノから探し物を見つけるのも苦手です。時計の目盛りを目で追うことも同様です。
このようなタイプの子どもの場合、時計の練習というよりも眼球運動の練習として、一日3~5分くらい、飽きないように工夫しながら目盛りを数えることに取り組んでみてください。難しいようであれば、指や鉛筆を使って目盛りを指しながら数えてみましょう。国語の教科書も同じように読むと、飛ばし読みを防ぐことができますし、眼球運動の良い練習になります。
3.何かに夢中になると、ご飯やお風呂の時間になっても切り替えられない
この場合、時計の理解うんぬんの問題ではなく、子ども自身で決めた段取りがあり、そこから臨機応変に生活場面を切り替えられないという点に原因があることが多いです。
そこで、先程と同様に動物などのシールを貼った時計を用意し、『今はキリンだから、ゾウになったらお風呂入ろうね』などと前もって声がけしましょう。ときには時計を使わず、『このアニメが終わったらお風呂に入ろうね』と伝えても構いません。子どもの段取りに寄り添いながら生活場面の切り替えを促していくと、徐々に時計を意識しながら行動を切り替えられるようになるでしょう」(同)
一方、「時間の感覚が身につく」ことは、時計が読めることとは少し違ったプロセスが必要だと野田さん。
「たとえば、『家から学校まで大体10分かかる』や『好きなアニメが始まるまであと30分くらい』といった時間の感覚は、時計が読めることに加えて、ある程度の経験の積み重ねが必要です。何度も家と学校とを行き来し、早く着きすぎたり、時には遅刻したりといった経験が積み重なってこそ、『10分』という時間の感覚が身につくことに繋がります。
そして、経験を重ねて得た『10分』という感覚を応用することで、違う場所同士であっても到着時間を予想することができるのです。たとえば、学校まで10分くらいで行けるという感覚が身につくと、同じくらいの距離にある公園にも10分で行けると予想できるようになります」(同)
大人は当たり前のように「ここから○○までは歩いて5分くらいかな」と予想していますが、実は幼い頃からの経験の積み重ねがあってこそなのですね。
「ただし、同じ30分間でも好きなことをしているとあっという間に過ぎると感じますし、気が進まないことに取り組んでいるとやたら長く感じますよね。また、日本のように時間を守ることに厳しい国もあれば、比較的時間にルーズな人が多い国もあります。『時間の感覚』は国民性や個人差が大きいということは、頭に入れておくといいかもしれません」(同)
時計の読み方は習得するのが難しいと不安になってしまいがちですが、教科書や授業もそのことを踏まえたカリキュラムとなっているとのことで、少しホッとできたのではないでしょうか。家庭でもご飯やお風呂などの生活場面を良い機会とし、子どもが好きなシールを貼るなどして工夫しながら、楽しく時計や時間の感覚を身につけていけるといいですね。
(取材・執筆:水谷映美)
特定非営利活動法人 CEセンター理事長。学校心理士SV、公認心理師、算数教科書・指導書(学校図書)執筆ほか、全国の保育園・幼稚園・小中学校を訪問し、心理・発達の立場からさまざまな取り組みをしている。また、CEセンターでは勉強が苦手な子どもたちに向けた通信教材『まいぷり まいど』を販売、メール相談なども行っており、困難を抱えながら学校生活を送っている子どもと保護者に寄り添ったサービスを提供している。
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