1972年生まれ。雑誌編集者兼ライター。多数の週刊・月刊漫画誌のチェックを生業とし、最新の漫画情報を日々収集し続けている。漫画評論誌などでのコラム記事執筆や、カルチャー誌での漫画の選書など多方面で活躍中。
- トップページ >
- 週末・その他 >
- 「自然科学」が学べる、おすすめマンガ4選【保護者向け】
週末・その他
小学1年生 2019年4月12日の記事
「自然科学」が学べる、おすすめマンガ4選【保護者向け】
ママ&パパも楽しく学ぼう! 大人の“教養”ちょいかじり講座【第1回】
子どもたちに「勉強しなさい!」と言いながら、保護者自身はダラダラ…。大人になったからと言って、学ぶことを止めてしまってはいませんか!? 人生100年時代、しかも科学の進歩も目まぐるしい中、大人にだって十分“学ぶこと”の意味はあるはず。
そこでママノートでは、ママ&パパが楽しく学ぶきっかけになるような記事の不定期連載を始めます。第1回となる今回は、「自然科学」が学べる、おすすめマンガ4選。多数の週刊・月刊漫画誌をチェックし、各メディアで情報発信しているライターの芝田隆広さんにお聞きしました。「算数や理科はニガテだったんだよね…」というママやパパでも楽しく学べる4作品です。
◆今回ご紹介する作品
『はじめアルゴリズム』三原和人(数学)
『Dr.Stone』Boichi(科学全般)
『ハルロック』西餅(電子工作)
『はたらく細胞BLACK』初嘉屋 一生、原田 重光(医学・人体)
●数の世界に魅せられていく天才少年が主人公『はじめアルゴリズム』
「数学」と聞くと「とにかく難しい」「面倒くさい」「実生活では役に立たない」といったイメージをお持ちの人も多いのではないでしょうか。本作を読めばそんなイメージも変わるかも?
物語は、テレビ番組などでも人気を博した老数学者・内田が、とある廃校で小学5年生の少年・関口はじめと出会うところから始まります。内田は、はじめ少年に天才的な数学の才能があることを見出し、彼を数学の道へ導こうと決意します。一方、はじめも最初は戸惑うものの、内田によって示された数の世界に、しだいにのめり込んでいくことに。
本作では群論、トポロジー、多面体、リーマン予想などなど、難解な数学用語も多数登場しますが、身構える必要はありません。理屈を細かく説明するというよりも、はじめ少年が自然や人との付き合いなど「世界を知る」上での切り口として、数学がそこかしこに登場してくるからです。
読んでいると数学が私たちの生活に縁遠いものではなく、むしろさまざまな事象の根っこにあるものだということに気づかされます。数学の学びの深まりと、はじめの人間的成長がリンクしているのも見どころ。「数学者とはこういう物事のとらえ方をするのか」という一面も垣間見ることができ、非常に興味深いです。お子さんの多面的なモノの見方を伸ばしていくという意味でも、参考になるのではないでしょうか。
●ジャングル状態の地球を、科学の力で大冒険!『Dr.Stone』
私たちの生きる現代は、さまざまな科学が生み出したものによって支えられています。そんな文明がすべて崩壊してしまったら……?
舞台は、ある日突然、天から降り注いだふしぎな光線によって、すべての人間が石化してしまった地球。数千年後、天才的な科学の才能を持つ少年・千空と、その親友・大樹が石化から目覚め、物語は動き出します。数千年経っていますから、人類の作った文明はすべて失われ、周囲はジャングル状態。危険な野生動物もたくさん。そんな中で千空たちは、文明を蘇らせ、石になった人々を元に戻そうと奮闘していきます。
本作では主人公の少年たちが、原始時代さながらの世界で冒険を繰り広げながら、その中で見つけた素材を使って、現代でもおなじみのさまざまな道具を自作していきます。例えば、鉄やガラスを作ったり、自動車などの道具、果ては携帯電話まで……。現代文明を支える道具の数々がどのようなモノから作られているのか、どういう原理で動いているのかなどを解説していて勉強になります。
冒険はハラハラドキドキの連続で、迫力あるアクションシーンも満載。それでいながら、科学全般についても興味をかき立てくれます。2019年7月からはテレビアニメも放送開始予定ですので、お子さんと一緒に楽しんでみてはいかがでしょうか。
●マニアックで楽しい電子工作の世界へようこそ『ハルロック』
はんだごてを握り、回路を作り、さまざまな機械を自作する――。そんな電子工作を学校の技術家庭の授業などで行ったことがある人も多いでしょう。最近では、大人でも電子工作を趣味として楽しんでいる人が増えており、静かなブームとなっています。
『ハルロック』の主人公は、そんな電子工作をこよなく愛する女子大生。子どものころから、ドライバーを握ると身近な機械などを分解してしまう困ったクセの持ち主だった晴(ハル)は、高校の先生から電子工作を教わり、その世界にすっかりハマってしまいます。
彼女が電子工作で作るのは、ちょっと変わったモノばかり。寿命タイマーやゴキブリ探知機、肝試し用のおどかしマシンなどなど。日常生活におけるちょっとした思いつきを、創意工夫とはんだごてで形にしていく過程を、ワクワク感たっぷりに描いています。
電子工作というと難しくてマニアックなイメージがありますが、本作は日常ドタバタコメディ仕立てになっていて、クスクス笑いながらとても気楽に読んでいけます。電子工作の知識ついて細かく描かれてはいないものの、「機械いじりの楽しさ」が存分に詰まっていて、読めば電子工作経験者はもちろん、未経験者でもちょっとチャレンジしたくなってくるはず。電子工作の世界を覗いてみたい人は必見の一作です。
●あなたの身体の中はこうなっている!?『はたらく細胞BLACK』
人間の身体はさまざまな「細胞」でできています。本作の主役はなんとこの「細胞」。これらの細胞を擬人化して、「人間の身体の中で何が起きているのか?」を分かりやすく、そしてドラマ仕立てで面白く描いていくのが『はたらく細胞』シリーズです。
シリーズには少年向けの『はたらく細胞』もあり、こちらはテレビアニメ化もされています。『BLACK』はタイトルどおり、飲酒、喫煙、ストレス、睡眠不足といった、ブラック――つまり不健康な状態の肉体の中で起きている出来事を描いていきます。
本作の主人公は、運送会社のスタッフ風に描かれた新米赤血球。彼らは毎日せっせと身体中に酸素を運び続けているのですが、上記のような不健康な生活習慣のせいで、職場環境(肉体)はどんどん悪化し、労働も過酷になっていき、まさにブラック企業状態。そんな危機的状況を乗り切るために、赤血球や白血球といった細胞たちは必死で頑張っているのです。
本作を読んでいると、不健康な生活習慣、不摂生がいかに身体にダメージを与えているかがしみじみよく分かります。内容からも分かるとおり、『BLACK』は大人向けの内容となっていますが、より幅広く細胞について知りたいという人は『はたらく細胞』も合わせて読んでみることをオススメします。
(選書・執筆:芝田隆広)