東京大学理学部・大阪大学医学部卒業。1998年より大阪大学医学部にて教授を務める。弱視・斜視、眼瞼痙攣などの神経眼科が専門で、2010年には失明した患者の眼球に網膜を刺激する電極をつけ、光の動きを追えるまでに視覚を回復させる人工網膜の臨床試験に成功。デジタルデバイスが子どもの目に与える影響についても研究を重ねている。
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生活・しつけ
年長 2019年4月9日の記事
子どもの「めがね」、デビューはいつ? どう選ぶ?
小学校での視力検査をうけ、お子さんのめがねを検討するご家庭も増える就学前後。使い始めるタイミングや選び方など、疑問はつきませんね。そこで今回は、大阪大学・医学系研究科教授の不二門 尚先生に、子どものめがねの選び方や適切な使い方について教えていただきました。
●めがねの使用は「黒板の字が見えにくい」「裸眼0.3以下」が目安
学校健診で指摘されるケースもある視力の低下。どの程度になったらめがねの使用を検討するべきでしょうか。
「『黒板の字が見えにくい』がひとつの目安ですが、学校では席の位置にも大きく左右されます。ですから『裸眼の視力が0.3以下』を基準にするとよいでしょう。ご家庭でテレビを近くで見ている、目を細めて見ている様子が見られる場合も、視力の低下が疑われます」(不二門先生)
“めがねを使い始めると、視力の低下が進む”といったウワサ話も聞かれますが…。
「いわゆる“度の強いめがね”で、『過矯正』という状態になると、視力の低下が進む可能性はあります。が、適切なめがねを使えばそのような心配はいりません」(同)
●めがねを作ろうと思ったら、まずは眼科へ
実際にめがねを作りたいと思ったら、直接めがね店に行けばよいのでしょうか? 視力検査はお店でもできますが…。
「まずは眼科を受診しましょう。それには2つの理由があります。
【1】病気による視力低下を早期発見できる
視力低下には、近視・遠視・乱視といった屈折異常のほかにも、さまざまな原因があります。中には角膜や網膜の病気、軽度の白内障などの病気が隠れている場合も。これらはごくまれなケースですが、眼科を受診せずにめがねを作ると早期発見ができず、治療が遅れてしまいます。
【2】どの程度の矯正が適当か判断できる
先ほどお伝えした通り、強すぎる度数のめがねによる『過矯正』により、視力の低下を招くことがあります。めがね店で視力検査の結果だけをもとに作ると過矯正になりがちですが、眼科であればどの程度の矯正が適当かを判断し、処方箋を出すことができます」(同)
自分で選んだめがね店で、眼科発行の処方箋に基づいてめがねを作ってもらうことも可能です。いわゆる格安めがね店でも対応可能なところはあり、子どもにはむしろ受診を推奨しているお店も。作るためのステップは増えますが、きちんと調べてから作れば安心ですね。
●入学前の年長さんなら、「小児眼科」を受診するのが安心
受診する眼科はどのような基準で選ぶといいのでしょうか?
「眼科選びは、就学を境に分けて考えましょう。小学校に行ってみたら黒板の字が見えにくい、学校健診で視力が低いことが判明した…というタイプは『学童近視』とも呼ばれ、深刻な症状に至るケースはそれほど多くありません。受診するのは一般的な眼科でOKです。
一方、未就学児の場合は『小児眼科』を専門とする医師が安心です。こちらはかなり人数が少ないのですが、『日本小児眼科学会』のサイトで確認できます」(同)
(参照:『日本小児眼科学会』ウェブサイト)
小学校では定期的に検診がありますが、未就学児の場合は眼科などを定期的に受診したほうがよいのでしょうか。
「幼稚園などでの検診も増えていますから、そちらで指摘されたり、日常生活で視力低下の兆候を見つけたりしてから受診するので十分です。両親とも近視の場合は心配かもしれませんが、視力は遺伝的要因と環境要因の両方で決まるため、子どもが必ず近視になるとは限りません。どうせ遺伝するから…と諦めてしまわず、目を守る努力をしつつ、兆候を見逃さないように気をつけましょう」(同)
●作っためがね、使い方のポイントは? いつもかけておくべき?
実際にめがねを作った場合、使い始めたら常にかけていないといけないのでしょうか? 子どもがめがねをかけるのを嫌がるケースもあります。
「スポーツのときなどは、かけていると危険があったり、ジャマに感じたりする場合もありますね。ゴーグルタイプのめがねを使う方法もありますが、裸眼視力で運動に支障がない場合ははずしても大丈夫です。
基本的には、見えにくさを感じる場面でのみ、めがねをサポートとして使うと考えましょう。たとえば黒板の文字を読む場面ではかけて、体育や、宿題で手元だけ見えればよい場面でははずす…といった使い方でもOK。“見えにくさを適度に解消”するためのツールとしてとらえるといいでしょう」(同)
学習面でも日常生活でも、必要な情報がしっかり視認できないと理解が深まらず、危険があったり、子ども自身の意欲に影響が出たりするもの。視力が落ちてきた場合はがまんせず、使い始めるのが正解ですね。親のほうも日頃から子どもの様子に注意を払い、必要に応じてサポートしてあげたいですね。
(取材・執筆:高柳涼子)