現在放送大学客員准教授/関西大学・昭和女子大学非常勤講師、博士(情報学)。静岡県の公立小学校教諭、関西大学初等部教諭/中等部兼務を経て現職。図書館教育、情報教育に取り組み、著書を多数執筆。教育用情報システムの開発・研究にも複数参加している。現在大学では「司書教諭資格取得科目」を担当。
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学校・まなび
小学1年生 2019年3月14日の記事
学校の宿題のひとつである「日記」。スラスラと一人で書き進める子もいれば、なかなか取り掛からないという子も多いのではないでしょうか。国語や算数の宿題のように答えがないため、親としてもどのようにアドバイスすればいいか迷うところです。そこで今回は、日記の宿題が出る意味や、子どもへのアドバイスのコツを、元小学校の教員であり大学の客員准教授として活躍されている塩谷京子先生に教えていただきました。
1年生になると「日記」の宿題が始まります。はじめの頃は特に、親が近くで見守りながらアドバイスしたいものですが、正直どこまで求めていいかわからず、筆者自身も声がけが難しいなと感じています。小1の日記の宿題は、どのような目的があるのでしょうか?
「同じ1年生でも、実は時期によって日記の目的が違います。その段階以上のことを求めてしまうと、子どもは文章を書くことに苦手意識を持ってしまいかねません。そうならないためにも、まずは文章を習うステップについて知っておきましょう。
小1の日記の大きなねらいは、『書き言葉』の習得です。私たちは、見たり聞いたりしてインプットした情報を、話したり書いたりする方法でアウトプットします。ここでポイントとなるのは、『話し言葉』と『書き言葉』は違うということ。そして、『話し言葉』には、『日常的な話し言葉』と『公の場での話し言葉』の2種類があるということです。
家庭内や友達との会話と、みんなの前で発表するときの言葉は違いますよね。子どもが普段に耳にしているのは、いわゆる『日常的な話し言葉』です。それが、先生がオフィシャルな言葉で話しているのを聞き、『公の場での話し言葉』を少しずつ覚えていきます。
そのため日記も、『先生あのね、今日公園に行ったよ』というように、最初は話し言葉そのままで書いていたものが、だんだんと『今日ぼくは公園に行きました』という書き言葉へと変わっていくのです」(塩谷先生)
ちなみに、関西弁など方言を使うエリアに住んでいる子は、普段使っている方言を頭の中で標準語に変換し、公での話し言葉に変換し、書き言葉に直し…とさらに多くのステップを踏んでいるのだと塩谷先生。日記を書く(=書き言葉として文章に書く)ことは、想像以上に大変な作業だったのですね。
「書き言葉の習得」という最終目的を踏まえたうえで、最初のステップを教えてください。
「まずは日常会話をそのまま文字にするのが第一段階。そこから徐々にステップアップしていきます。最初のプロセスをスムーズに進め、日記に意欲的に取り組ませるためには『今日こんなことがあったよ!』という子どもの話を、じっくり聞いてあげましょう。
このとき大切なのは、『話してくれてありがとう。すごく嬉しかったよ!』と伝えること。そして『ママが聞いてこんなに楽しかったんだから、先生もきっとその話を聞いたら楽しいと思うよ。でも、クラス全員の話を一度には聞けないから、日記に書いてみようか』と提案してみるといいですね。『伝える』喜びの実感が、日記を進んで書くことに繋がります。はじめは、話したまま、そのままを文章にすればOKです」(同)
次のステップは、話し言葉から書き言葉へと変えていくこと。タイミングとしては、国語の授業で「作文」について習う時期。
「大きなポイントとしては、『~したよ』を『~しました』と文末表現を変える点です。今後少しずつ、接続詞の『なので』を『だから』に変えるなどの細かい部分を習っていきますが、この段階の日記では、あくまでも文末を変えるだけで十分です」(同)
文末を書き言葉に変換できるようになったら、次は文章全体の構成へとステップアップ。1年生で文章の構成までとは、改めて驚きです。
「文章の構成は、学年が上がるにつれて内容が変わっていきます。1~2年生では『順序』をとにかく大切にします。教科書に出てくる説明文も順序がハッキリと書かれている文章ばかりですし、先生が生徒に行動を指示するときも、必ず順を追って説明します。
日記でも、『はじめに・つぎに・そのあと』や『一番目に・二番目に・最後に』といった言葉を盛り込みながら、体験したことを順序立てて書くことを練習するのです。
そして、誰かに伝えるとき、突然『最初に』と話し出しても困りますよね。だから、最初の一文にこれから書く話の説明を入れます。『昨日、お母さんとクッキーを作りました。最初に、小麦粉と砂糖とバターを混ぜて生地を作りました。次に…』という流れです。すると、順序に沿って書かれた日記が完成します」(同)
このほかにも、少しずつ自分の気持ちを加えたり、さらに3年生頃からは、順序通りに書くのではなく、全体と部分に注目した文章構成へとステップアップしていくのだそう。文末も、小学校の頃は『ですます調』ですが、中学生になると『である調』へと変化していくそうです。
文章を書けるようになるためには幾多のプロセスがあり、ひとつずつ階段を上がっていくのだということを保護者が知っておくと、日記を書きはじめた頃に『事実ばかりじゃなくて、自分の気持ちも交えて書きなさい』などという時期尚早な指摘をしないですみます。
高すぎる要求をしないことが、日記に対する苦手意識を避けるための一番の方法なのかもしれませんね。次回は、小1のママたちが抱える「日記の宿題」の具体的な悩みについて、引き続き塩谷先生に教えていただきます。
(取材・執筆・撮影:水谷映美)
現在放送大学客員准教授/関西大学・昭和女子大学非常勤講師、博士(情報学)。静岡県の公立小学校教諭、関西大学初等部教諭/中等部兼務を経て現職。図書館教育、情報教育に取り組み、著書を多数執筆。教育用情報システムの開発・研究にも複数参加している。現在大学では「司書教諭資格取得科目」を担当。
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