公益社団法人 日本小児歯科学会理事長、神奈川歯科大学大学院歯学研究科、口腔統合医療学講座小児歯科学分野教授。神奈川歯科大学付属病院では小児歯科の診療科長を務めるほか、矯正・小児系歯学の研究などを行っている。
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生活・しつけ
小学1年生 2019年2月21日の記事
幼稚園を卒園し、新たに小学生となる頃には、歯も同じく乳歯から永久歯へ生え変わりの時期を迎えます。これから一生使う永久歯、きれいに生え揃ってくれるかどうか心配ですよね。今回は日本小児歯科学会理事長の木本茂成先生に、歯並びが悪くなる原因と、歯並びのためにおうちでできることを聞きました。
歯並びが悪いと、どんな問題が起こるのでしょうか?
「歯並びが悪いと虫歯になりやすいだけでなく、噛む力の低下から消化不良や胃腸障害を招くことがあります。さらには顎の関節への影響から体全体の発育に悪影響を及ぼすこともあり、単なる見た目だけの問題にとどまりません。
歯並びが悪くなるかどうかは、顎の形や大きさといった骨格はもちろん、外側から歯を押さえる唇や頰の筋肉、そして内側から歯を押す舌の筋肉のバランスも大きく影響しています。例えば指しゃぶりや唇を噛むクセがあるだけでも、不正な噛み合わせや歯列の乱れを招くので、やめさせるようにしましょう」(木本先生)
また、姿勢の悪さも噛み合わせを悪くする原因のひとつなのだとか。
「例えば猫背の場合、下顎が後方に引っ張られて、上下の顎の位置関係がずれてきます。また、上顎を突き出すことになるため、顎や表情筋の発育を阻害し、出っ歯の原因にもなります。そして見落としがちなのが、睡眠時の姿勢です。うつ伏せ寝をすると上顎が圧迫される時間が長くなり、上顎の幅の成長が抑制されます。歯列を考えるのであれば、仰向け寝の方が良いと言えますね」(同)
骨格だけでなく、舌や唇の筋肉の使い方、そして姿勢なども歯並びに関係があるのですね。
先生によれば、最近、特に問題になっているのが子どもに多い口呼吸。常に口が開いたままになっていることから起こる唇の筋力の低下によって、歯が前に出てきてしまう子どもが増えているそうです。
「口呼吸が常態化してしまう原因は3つあり、1つめはアレルギー性鼻炎等による鼻づまりで鼻呼吸ができない場合に起こる『鼻閉によるもの』。2つめは単なる習慣で口が開けっぱなしになっている『クセによるもの』。3つめは噛み合わせや歯並びがすでに悪い状況にあり、そもそも口を閉じることができない『歯性(噛み合わせ)』によるものです。
このどれが原因なのかは歯科医で診断することができます。クセや歯性が原因であれば歯科医が治療しますし、鼻閉であれば耳鼻科を紹介します。
なお、歯並びに影響する唇や頬、舌の筋肉の問題は『口腔機能発達不全症』と呼ばれ、そうした問題を改善するための診断や指導は2018年から保険が適用されるようになっています」(同)
歯並びを悪くさせないための予防なら保険が使えるのですね。子どもが口呼吸しているようであれば、一度歯科医の診察を受けてみるのが良さそうです。
歯並びをよくするためには硬いものを噛むと良いイメージがありますが、これは正しいのでしょうか?
「噛むことは大事ですが、それは硬いものに限りません。乳歯が生えそろってから歯の数が20本のまま変わらない3~6歳の間には、硬いものはもちろんのこと、軟らかいもの、粘着質のもの、繊維質のもの、噛みちぎらなければ口に入らないもの等、とにかくさまざまな性状の食品を食べることが大切です。さまざまなパターンのものを噛み切り、咀嚼し、飲み込む経験を繰り返すことで正しく噛むことを学習でき、ひいてはその後の良い歯並びをもたらします」(同)
ちなみに、よく耳にする「最近の子は噛むことが足りないので顎が小さくなり、歯並びが悪くなっている」というのは実は誤りで、最新の研究では、顎が小さくなっているのではなく、永久歯が大きくなっていることがわかっているのだとか。これは栄養状態の改善で大きくなってきた永久歯の変化に、顎の骨が追いついていないためだと考えられているそうです。
「また、丈夫な歯を作るにはバランスの良い食生活も大切です。牛乳、乳製品、魚介類、野菜など幅広い食品から、カルシウム、たんぱく質、リン、ビタミンA・C・Dなどの栄養素を摂りましょう。特に歯が生える前、顎の骨の中で形成される時期の栄養が、歯の質を左右します。最後に生えてくる永久歯(第二大臼歯)ができる中学生の頃まではとくに、歯に良い食生活を心がけてください」(同)
クセ、姿勢から呼吸法、食べ物の噛み方まで、歯並びを左右する要素はたくさん。これから永久歯が生えてくる子どもたちに、歯並びをよくする習慣を身につけてほしいですね。
(取材・執筆:宇都宮薫)
公益社団法人 日本小児歯科学会理事長、神奈川歯科大学大学院歯学研究科、口腔統合医療学講座小児歯科学分野教授。神奈川歯科大学付属病院では小児歯科の診療科長を務めるほか、矯正・小児系歯学の研究などを行っている。
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