公益社団法人 日本小児歯科学会理事長、神奈川歯科大学大学院歯学研究科、口腔統合医療学講座小児歯科学分野教授。神奈川歯科大学付属病院では小児歯科の診療科長を務めるほか、矯正・小児系歯学の研究などを行っている。
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生活・しつけ
小学1年生 2019年2月22日の記事
幼稚園を卒園し、新たに小学生となる頃は、乳歯から永久歯に生え変わって行く時期でもあります。そこで気になってくるのが子どもの歯並び。気にはなるけれど、今の時期から歯列矯正を始めるべきかどうか、迷ってしまう人も多いのでは? そこで、日本小児歯科学会理事長の木本茂成先生に、子どもの歯列矯正を始めるべきタイミングについて聞きました。
歯列矯正は何歳頃から始めるといいのでしょうか?
「実は、歯の大きさは歯茎の中にある段階でほぼ決まってしまっています。でも、永久歯が生える前に、歯並びに影響を与える筋肉をトレーニングする『口腔筋機能療法』を行えば、矯正装置の必要を少なくする方向にもっていくことも可能です。
ですから、乳歯の生えそろった3歳くらいから、遅くとも永久歯が生え始める前の6歳くらいまでには、子どもの歯列矯正に詳しい歯科医院を受診できるといいですね。早めに診断を受けて指導を守れば、永久歯の生え方をより適正なものにすることができます」(木本先生)
なんと! 理想的なタイミングは永久歯が生え始める前なのだそう。とはいえ、幼児のうちからまだ生えてもいない永久歯の心配をするのは、現実的にはなかなか難しいですよね?
「実際は、歯が生え替わる7~8歳で受診される方が多いですね。永久歯の前歯が上下4本ずつ生えた段階であれば、子どもの歯に詳しい歯科医師なら骨格の検査を行うことで、全部の歯が永久歯に生え変わった段階でどのような歯並びになるのか、ある程度の予測がつきます。
そういう意味では、7~8歳は決して早くはないものの、良いタイミングと言えます。軽度な異常であれば、前述の口腔筋機能療法により歯並びと噛み合わせを修正することも可能です。ただ、長期間放置された異常ほど、装置によって歯を動かす矯正が必要になることが多くなる、ということは覚えておいてください」(同)
ちなみに、早めに矯正をやっても、その後の成長で元に戻ってしまう可能性はないのでしょうか?
「矯正が完了した後も、歯や顎の使い方、関係する筋肉に左右されて、歯は多少動いてしまうものです。ただ、早めに始めたからといって不利になることはありません。適切な治療とアドバイスを受けている限り、完璧な状態から多少変わってしまうとしても、十分許容できる範囲に抑えることができるのです」(同)
もっとも例外として、顎の骨に異常がある場合などは、成人になり、骨格が決定するのを待ってから治療に入ることはあるそうです。もちろん、そうした判断は歯科医師でなければできないので、まずは相談してみることが大切なんですね。
歯並びは唇や頬、舌の筋肉の影響に大きく左右されるのだそう。矯正器具を取り付けるだけでなく、そうした筋肉の正しい発達を促すことも矯正治療のうちだということです。そのことを踏まえ、治療に早めにとりかかる場合、遅めにとりかかる場合のメリット・デメリットをまとめました。
【早め(3~6歳)にやるメリット・デメリット】
・メリット
早め(永久歯生え変わり前)に歯並びに影響を与える筋肉のトレーニングを行うことで、そもそも器具を使った歯列矯正の必要を無くす、あるいは、より簡単な歯列矯正で済むことが望める。遅く始めた場合に比較して歯が動きやすいので、矯正にかかる時間や、身体的・金銭的負担が少なくて済む。
・デメリット
永久歯に生え変わって以降の歯並びを予測することが、遅めにやる場合に比較すれば難しい。また、矯正器具をつけると、つけない場合に比べて虫歯になりやすいので、保護者による歯の管理がより必要になる。
【遅め(7歳以上)にやるメリット・デメリット】
・メリット
初めて永久歯に生え変わる7~8歳くらいなら、より確実な未来の歯並びを予測し、それを元に治療ができる。全て永久歯になればそこから大きく歯が動くことはないので、本当に矯正したいかどうか自分で判断できる。
・デメリット
早く始めた場合に比較して歯が動きにくいため、矯正にかかる時間が長くなり、身体的負担も大きくなる。また、病院にもよるが、かかる費用も高額になることがある。
歯科矯正はとにかくお金がかかると聞くのですが、具体的にどれくらいになるのでしょうか?
「歯科矯正治療は保険適用外の自由診療であり、料金体系や金額は医院によってさまざまです。一般に開業されている歯科医院では、乳歯だけの場合は3万円から20万円、永久歯が混ざっていると15万円から60万円、全て永久歯になってからだと50万円から130万円ほどが目安となりますが、かなりの幅があるのも事実です。また、通院ごとに別途調整料が必要となる医院もあるので、契約の際には全てを含めた最終的な金額がどうなるのか、よく確かめることが必要です。
ちなみに歯列矯正は保険適用外ですが、歯列の乱れを未然に防ぐための指導、トレーニングは2018年より保険で受けられるようになっています。永久歯が生える前の早めの受診は、こうした面でもメリットがあるのです」(同)
時間もお金もかかるのが歯列矯正。矯正への考え方や治療のプランは歯科医師によっても異なるため、はじめによく相談・検討し、納得いってから始めることが大事だといいます。子どもの歯列矯正を思い立ったら、まずは事前のリサーチから始めたいですね。
(取材・執筆:宇都宮薫)
公益社団法人 日本小児歯科学会理事長、神奈川歯科大学大学院歯学研究科、口腔統合医療学講座小児歯科学分野教授。神奈川歯科大学付属病院では小児歯科の診療科長を務めるほか、矯正・小児系歯学の研究などを行っている。
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