一般社団法人育母塾 代表理事。命を守る・育むプロフェッショナル。大阪府在住。正看護師。救急救命ナースとして吹田市民病院・聖路加国際病院に勤務した後、現在は国際救命救急災害レスキューナースとしても活動中(国境なき医師団・JMTDR在籍)。救急についての講演・執筆や、育児の在り方、ママと子どもの姿勢についての講演会や講座を全国で開催している。
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生活・しつけ
年長 2019年2月14日の記事
だんだんと近づいてきた小学校入学。働くママにとっては、保育園に比べて学童のお迎え時間が早かったり、時短勤務が終了したりと、いろいろと不安が多いものです。そんな「小1の壁」を、先輩ママはどうやって乗り越えて来たのでしょうか。今回は、2児の母でありながら救命救急災害レスキューナースとして活躍、さらには子育てに関する講座を全国で開催している育母塾・代表理事の辻直美さんにお話を伺いました。
辻さんは、女手一つで息子さん2人を育てているシングルマザー。育児に家事に仕事に、さらには介護までも一人で担っていた時期もあったそうです。毎日分刻みのスケジュールでお仕事をされていますが、一体どうやって複数のタスクをこなしてきたのでしょうか。
「わが家では、子どもが小さい頃から『ファミリー』ではなく『チーム辻』としてやってきました。子どもであっても一人の人間として扱い、それぞれに役割があるんだよ、それを果たすことでチームは成り立つよ、と伝えてきたんです。
仕事をしているとなおさら、ママ一人ですべての家事をやっていたら、忙しくてとても毎日が回りませんよね。そこでチームの絆が試されるわけです。子どもにお手伝いを『お願いする』のではなく、『役割を渡す』のですね。
たとえば、お風呂洗いをお願いするなら、『お風呂洗い大臣』と命名してみる。何か役割を渡されたら、『自分がやらなきゃ!』と小さな子どもでも頑張ります。もちろん、時にはサボったり忘れていたりするときもありますが、そんなときは『なんで洗ってないの!』と叱るのではなく、『お風呂洗い大臣が洗ってくれないと、お風呂に入れないんですけどー』なんて伝えてみるんです。靴をそろえる『玄関大臣』であれば、『大臣、玄関がすごいことになってるんですが…』とかね。わが家では、そうやって今ある状況を面白がりながら、子どもに役割を気づかせてきました」(辻さん)
その方法だと、本当に楽しいですね! ママのストレスもずいぶん減りそうです。
「あまりにできない日が続いた場合は、ママが代わりにやってしまうのではなく、理由を子どもに聞いてみます。『大臣、どうして最近靴がたくさん出ているのですか?』と聞くと、『ママの靴が多すぎて下駄箱に入らないんだよ』なんて教えてくれます。そうなると、こちら側も改善しなくちゃいけないですよね。そうやって相手に寄り添いながら、一緒にチームとして家事を進めていくと、ママの負担も少なくなると思います。
それから、一度相手に任せたことは遮らない、口を出さない、手も出さない。もちろん、やり方を一緒になって教えるのは大切ですが、せっかく手伝ったことを注意したり、やり直されたりしたら、やっぱり気分が良くないですよね? 任せたら、信じて待つ。見守る。ここを意識すると、お互い気持ちよく協力し合えると思います」(同)
幼稚園や保育園から小学校という新しいステージに進むことで、子どもの心も不安定になりがちだと思います。心のケアについて、何かアドバイスはありますか。
「育児は遠距離恋愛中のカップルだと常々思うんですよ。子どもは、いつも相手(ママ)のことを考えているヒロインで、ママは赴任先の仕事に追われる彼氏(笑)。ママにとっては、毎日新しい仕事であっという間ですが、子どもにとってはママと離れている授業時間や学童の時間を、ものすごく長いと感じるでしょう。今まで以上に、ママの愛情をしっかりと感じたいんですよね。だからこそ、家に帰って子どもに会った瞬間の第一声にとても意味があると思うのです。
わが家では、『学校楽しかった?』『給食おいしかった?』というイエス・ノーで答えるだけの質問ではなく、『今日は(仲の良い)○○くんと遊んだの?』『図工の時間あったよね。今日は絵を描いた?』というように、その子ならではの質問で会話を広げるようにしていました。そうすると、『ママは仕事で忙しいけど、ちゃんと自分のことを見てくれている!』と愛情に確信が持て、気持ちが落ち着くんです」(同)
会話をするときも、ただ言葉をかけるだけでなく、目線を子どもと同じ高さまで下げる、体ごと子どもに向ける、触れる。そういったコミュニケーションを普段から意識していると、子どもの些細な変化にも気づきやすくなると辻さんは言います。ちょっとした工夫が大切なのですね。
一言で「小1の壁」と言っても、その悩みは人それぞれ。でも、辻さんのアドバイスにあったように「なんでも面白がる」、「相手のことを知ろうとする、真正面から向き合う」、そして「チームとして家族で団結する」ことで、その壁は低くなるのではないでしょうか。次回は、具体的に家事を効率よくまわすテクニックについて、引き続き辻さんに伺います。
(取材・執筆:水谷 映美)
一般社団法人育母塾 代表理事。命を守る・育むプロフェッショナル。大阪府在住。正看護師。救急救命ナースとして吹田市民病院・聖路加国際病院に勤務した後、現在は国際救命救急災害レスキューナースとしても活動中(国境なき医師団・JMTDR在籍)。救急についての講演・執筆や、育児の在り方、ママと子どもの姿勢についての講演会や講座を全国で開催している。
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