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学校・まなび
小学1年生 2019年2月12日の記事
2020年度から新しい「学習指導要領」が小学校で全面実施になります。かつてない大きな教育改革として注目が集まる一方で、いまいちポイントが掴めず、戸惑っている保護者の方も多いのではないでしょうか? そこで、保護者が知っておくべき「学習指導要領」の基礎知識について、学研教育総合研究所の大塚恵理子さんにお話を伺いました。
学習指導要領というと「一年生ではこの漢字を教えましょう」のように、先生に向けて教育水準を示すものというイメージがあります。そもそもの目的は何なのでしょうか。
「おっしゃる通り、学習指導要領とは『この学年でこれは必ず教えましょう』という学校教育の目標や最低限の教育内容を示すもので、教えるべき教科はもちろん、『どの内容をいつ教えるべきか』まで詳細に定めてあります。
教育の目的や理念を示した『教育基本法』と、義務教育の期間など学校教育制度の基本方針を定めた『学校教育法』を前提として、時代や社会情勢に合わせてだいたい10年に一度、大きな改訂を行っているのが『学習指導要領』です。各学校の時間割は学習指導要領を基準に決められますし、学習指導要領が変われば、教科書もそれに合わせて変わるのです。
『私立には適用されない』と勘違いされることもありますが、学習指導要領は私立も含めた全国すべての小・中・高校・特別支援学校が対象です。ただし、『どのような方法で教えるか』や『プラスαをどの程度付け加えるか』はそれぞれの学校に委ねられるため、私立校はその部分で差を付けて、特色として打ち出していたりします」(大塚さん)
先生方に対し「教えるべき内容」を定めているものだとすると、保護者にとっては直接関係ないような気もします。知っておく必要はあるのでしょうか?
「確かに、学習指導要領を一番使っているのは、現場の先生方でしょう。また、教科書も学習指導要領に添って作られるので、保護者がわが子の学習内容を知るには、“まずは教科書を見る”というのが近道です。ただし、『子どもたちが大人になる頃、どんな能力が必要とされるのか』、『そのために日本の教育は何を目指すのか』といった大局を知るためには、学習指導要領を把握しておくことに、大きな意味があると思います」(同)
小学校学習指導要領(平成29年告示)の総則編、国語編、体育編
実際の学習指導要領を用意していただきましたが、小・中・高校の教科ごとに、数百ページにもわたり細かく書いてあるのですね! 例えば体育なら、それぞれの運動遊びでの体の動かし方まで詳しく書いてありますが、記載内容については誰がどのように決めているのでしょうか?
「最終的にまとめ上げるのは文部科学省ですが、施行の4~5年前から、外部のさまざまな有識者を集めて意見を募り、時間をかけて作成します。核となるのが『中央教育審議会(中教審)』という有識者会議で、メンバーは大学教授や自治体の首長、経団連の代表、PTA連合会会長、教育委員会、NPO法人のトップなどさまざまです。
中教審は分野やテーマごとに『分科会』や『部会』といった下部組織を有していて、例えば、『初等中等教育分科会』の中に『教育課程部会』があり、さらに『国語ワーキンググループ』があるといった具合です。ワーキンググループまで広げると、関わっている人は1,000人を超えるのではないでしょうか。
進め方としては、文部科学大臣が『このようなトピックで話し合ってください』というリクエスト(諮問)を出し、中教審や各分科会が『話し合いの結果、このようになりました』と報告(答申)する。今回のような大きな改訂の場合、4~5年をかけて、答申をまとめるまでに百回以上会議を開催する場合もあります」(同)
それぞれの組織を構成するメンバーや、答申の内容はすべて文科省のホームページで公開されているとのこと。また、メールや郵送、FAXなどで一般からの意見公募(パブリックコメント)も行っており、パブリックコメントには私たち一般の保護者ももちろん参加できます。これらを勘案して作成されたものが、文部科学大臣から発表(告示)された時点で確定となるそうです。
「学習指導要領を保護者が把握しておくことは意味がある」とのことでしたが、実際にはどの程度、理解すれば良いのでしょうか? 具体的な方法も教えてください。
「すべてを細かく読み込む必要はなく、改訂の背景や、国が目指す教育の方向性を知ることが大切です。学習指導要領は文科省のサイトにPDFで掲載されていますが、それぞれの冒頭にある『前文』や『総則』に目を通せば、保護者としては必要十分ではないでしょうか。科目ごとの目的がわかり、子どもや学校との関わり方が変わってくると思います。2020年以降の新学習指導要領については、保護者・一般向けのパンフレットも用意されているので、こちらを利用するのでも十分です」(同)
参照:『ポイントがわかるリーフレット』(文科省webサイトより)
これには、どんなことが書いてあるのでしょうか?
「まさに、これからの学校教育(=学習指導要領)が何を目指すかが書いてあります。社会の変化のスピードがどんどん速くなっている今、就学前後の子ども達が社会に出るころにどのような時代を迎えているか、想像がつかない方がほとんどですよね。
現行学習指導要領の主題は『生きる力』ですが、新しい学習指導要領では『生きる力 ~学びのその先へ~』とさらに発展します。子どもたちが大人になる頃にはどんな社会になっていて、そのような社会を生き抜くために、何を学ぶ必要があるのかを知ることは、保護者にとっても子育てを考えるうえでのヒントになると思います」(同)
ちなみに、新しい学習指導要領では、“学校・保護者・地域”の三者連携にも重きが置かれているとのこと。保護者が教育の方向性を知ることは、ますます重要になってきそうです。後編では2020年度の改訂について、引き続き詳しくお話を伺います。
(取材・執筆:高柳涼子)
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