絵本・児童書のライター。出版社勤務を経て、絵本紹介サイトなどで執筆。作家へのインタビューも行う。9歳、5歳、1歳を子育て中です。毎回、この時期ならではのおすすめの絵本を紹介していきます。
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生活・しつけ
小学1年生 2018年9月25日の記事
日本語の美しさや、面白さを感じられる絵本5選
読者のみなさまから投稿いただいた「子育てのお悩みや疑問」のヒントになる絵本をご紹介していく当連載。第3回のテーマは「日本語の美しさや、面白さを感じられる絵本」。小学生になって活動領域が広がると、子どもは良くも悪くも、いろいろな言葉を覚えてきます。「子どもの言葉遣いが乱暴になった」「悪い言葉を使うのが楽しいみたいで……」とお悩みのママも多いよう。
そこで、悪い言葉を注意するのはもちろんですが、もっと楽しい言葉や、つい口にしたくなるようなフレーズを、親子で一緒に楽しんでみてはいかがでしょうか? 日本語の美しさ・楽しさが伝わってくる絵本を5冊ご紹介します。
◆今回ご紹介する絵本
『キリンさん』(小峰書店)
『どうぶつえんはおおさわぎ』(文研出版)
『おてらのつねこさん』(福音館書店)
『さかさことばでうんどうかい』(福音館書店)
『これはのみのぴこ』(サンリード)
●まどみちおさんの詩の言葉がかがやく『キリンさん』
「ぞうさん」などの童謡で知られ、104歳で亡くなった詩人、まどみちおさん。まどさんの詩はとても平易でありながら、心の奥底に語りかけてくる力を持っています。『キリンさん』(まどみちお 詩、南塚直子 絵)はまさにそんな詩と可憐な銅版画のコラボレーションがすばらしい一冊。「なみとかいがら」「さかな」「コオロギ」「てんとうむし」といった身近な題材で、声に出して読めば、耳をすませたくなる言葉がいっぱい。日常でざわざわと荒れたり浮いた心を、静めてくれます。個人的なおすすめは「くまさん」。冬眠から目覚めたくまの子が「ええと ぼくは だれだっけ」「そうだ ぼくは くまだった」「よかったな」と自分自身をうれしく思う姿にほのぼのします。ふっと肩の力をぬいて、美しい詩に出会えます。第4回日本絵本賞受賞作。
●「ゾウ」が「ソウ」になっちゃった!?『どうぶつえんはおおさわぎ』
ある朝、動物園からあるものがこつ然と消えてしまいます。それは動物じゃなくて……「テンテン」! 点々がなくなってしまったせいで、「ゾウ」は「ソウ」に、「どうぶつえん」は「とうふつえん」になってしまいました。他にも「ゴリラ」は「コリラ」になり、飼育係と園長の話す言葉からも「テンテン」が消え、会話はめちゃくちゃ。「ソウのしいくかかり」は消えた「テンテン」を必死に探しまわりますが……? 『どうぶつえんはおおさわぎ』(二宮由起子 文、あべ弘士 絵)は、私たちが日頃話している日本語の中の「テンテン」や「マル」がいかに大事かを教えてくれます。「テンテン」が消えたり増えたりする奇妙な世界に、思わず笑ってしまう一冊。
●手の甲をつねって、こちょこちょ……! わらべうた絵本『おてらのつねこさん』
『おてらのつねこさん』(やぎゅうげんいちろう 作)は、わらべうたの「おてらのつねこさん」から生まれた絵本。登場人物は「たぬきさん」「あかりちゃん」「ねこさん」。お寺の本堂でたぬきさんが昼寝をしていたら、あかりちゃんとねこさんが掃除にやってきます。たぬきさんが座布団に化け、様子をうかがっていると、あかりちゃんとねこさんは「おてらのつねこさん」をして遊び始めました。「おーてーらーの つーねこさんが かいだん のぼって こっちょこちょー」と、手の甲をつねったあと腕をのぼって、脇の下をこちょこちょ。たぬきさんも一緒に遊びたくてたまらなくなり……。せりふ回しはユーモアたっぷりで影絵風の絵もユニーク。「わらべうた絵本って面白い」と目からウロコの絵本です。
●上から読んでも下から読んでも同じ文。『さかさことばでうんどうかい』
『さかさことばでうんどうかい』(西村敏雄 作)は、上から読んでも、下から読んでも、同じ「さかさことば」でできている絵本。選手入場からパン食い競走、騎馬戦、跳び箱、最後はリレーに表彰式まで……「ぞうくん ぱん くうぞ」「たっくる くった いたいよ いたい」「いちい だれだ いちい」「いがいや いがい いやはや はやい」と動物たちが大活躍。『バルバルさん』『うんこ!』などほのぼのとしたユーモラスな絵でファンが多い、西村敏雄さんのセンスが光る絵本。
●谷川俊太郎さんの一風変わったロングセラー絵本。『これはのみのぴこ』
『これはのみのぴこ』(谷川俊太郎 作、和田誠 絵)は、「これは のみの ぴこ。これは のみの ぴこの すんでる ねこの ごえもん。これは のみの ぴこの すんでる ねこの ごえもんの しっぽ ふんずけた あきらくん」「これは のみの ぴこの……」といったふうに、ページをめくるごとに言葉が連なっていく絵本。作者は、日本を代表する詩人の谷川俊太郎さん。「あきらくんの まんがよんでる おかあさん」や「おだんごやさんに おかねをかした ぎんこういんと ぴんぽんをする おすもうさん」など意表をつかれる組み合わせにわくわくします。発売以来約40年に渡るロングセラーで、今も子どもに大人気。言葉の面白さを体験できること間違いなしです。
いかがでしたか? わらべうた、さかさ言葉、早口言葉のような「これは のみの ぴこ……」など、子どもはちょっと変わった響きの言葉が大好きです。気に入ったら何度でも、繰り返し真似をするかもしれませんよ。まどみちおさんのなにげない詩にかくれた美しさや、「テンテン」が消えた世界の可笑しさも、親子で声に出して存分に味わってくださいね。
(選書・執筆:大和田佳世)
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