筑波大学附属小学校教諭。1966年、千葉県生まれ。1989年に東京学芸大学教育学部を卒業。千葉県成田市立加良部小学校、千葉県印西市立原山小学校を経て現職。筑波学校体育研究会理事長を務める。著書に『体育授業に必要な3つの力』(東洋館出版社)など。
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年長 2018年9月10日の記事
近年よく耳にする、子どもの運動能力低下。子どもの基礎的な運動能力を伸ばすために、幼児期から親ができるサポートはあるのでしょうか?『体育授業に大切な3つの力』(東洋館出版社)などの著書を持つ、筑波大学附属小学校の平川譲先生にお聞きしました。
近年、子どもの運動能力が低下しているという話題を耳にします。実際に、どんな傾向があるのでしょうか。
「ここ10年以上、問題視されているのは、子どもの体の動きが不器用になっているということ。特に、手足を操作する際の巧みさが低くなっています。具体的には、両手両足を地面について歩く“クマ歩き”のような動きが苦手ですね。また、投力が低下しているというデータもあります」(平川先生)
こうした傾向は、小学校入学時点ですでに見られるとのこと。その原因は何なのでしょう?
「運動能力は、いろいろな動きの積み重ねで高まっていきます。つまり、原因は幼少期からの経験不足。車の走行量が多くなったり、子どもを狙う事件が増えたりしたことで、外遊びで思いっきり体を動かす機会が少なくなってしまったからでしょう」(同)
親がかまいすぎのケースもあるのではないかと、先生は続けます。
「例えば、転ぶときに前に手が出ない子どもは、日常生活の中で親御さんが過度に手を出して、転ぶ経験を極端に少なくしているのではと感じます。明らかな危険は避けるべきですが、運動能力を高めるためには、多少の冒険をさせることも大切です」(同)
では、子どもの運動能力を伸ばすために、親はどんなサポートができるのでしょうか? 平川先生に、小学校入学前後の子どものための基礎的な運動遊びを教えていただきました。
〇スキップ
苦手な子どもには「ターン!タ!ターン!タ!ターン!」と声に出してリズムを取ってあげたり、手をつないで一緒に跳んであげたりしてリズムをつかませる。手をつないで、太ももを上下に動かすリズムを合わせるようにアドバイスするのが有効。
〇けんけん
まずは10メートル片足跳びけんけんができるように。次は、大股ジャンプをするように、片足ずつ大きく跳んでみる。大きく跳べると走るのが速くなる。跳ぶときに、手や上げたほうの足を大きく振って弾みをつけるのがポイント。
〇壁ぶつけ
投げる力をつける(例.右利きの場合)
1)壁から2~3メートル離れ、ボールを持って左側を前にして横向きに構える。
2)左足を一歩出したら、ボールを持った右手のひじを肩より上に上げる。
3)左足に体重を移しつつ、体をしっかりひねって投げる。狙いは、壁の地面から1メートルぐらいの高さ。
※投げる力が強くなってきたら、壁からの距離を遠くしてもよい。
〇クマ歩き
両手両足を地面につけ、膝を上げた状態でクマのように歩く。腕の力をつけ、逆さの体勢に慣れることができる。
〇登り棒
1)両手で棒を握り、足(太ももやすね)で棒を挟む。
2)足で体を支えたら、腕を伸ばす。
3)手で高いところをつかんだら、体を引き上げる。1)~3)を繰り返して上っていく。
腕や足の力を強くする。苦手な子には、親が棒を手で握って足場を作ってあげて。
〇鉄棒 “前回り”
1)低い鉄棒を順手で握る。
2)軽く飛んで下腹部を鉄棒に乗せ、胸を張って両肘を伸ばす。
3)前に体を倒す。
4)ぐるっと半回転したら、ひじをしっかり曲げて手でぶら下がる。
5)足からゆっくり着地。うまくできるようになったら、3回続けて素早くできるように。
大人は鉄棒を挟んで前側に立ち、回るときは肩、着地のときは腰を支えてあげて。
〇大人の人と逆上がり
逆上がりの練習になる。最後、子どもが回って下りるとき、大人は手を少し下げること。
1)大人と向かい合って立つ。
2)大人の両手の親指を向かい合う手でつかむ。その上から大人に手を握ってもらう。
3)大人の体に足をついて登り、ぐるっと一回転する。
〇ウサギ跳び
しゃがんだ状態から両手を伸ばして前方に手をつき、そのまま軽くジャンプ。手の近くに足を引き寄せる。これを繰り返して跳んで進む。必ず手をついてから、足を引き寄せるように行うこと。足だけで着地しないよう注意して。跳び箱が得意になる。
〇前転
しゃがんだ状態から、おへそをのぞき込むようにして回る。後頭部を床につけるのがコツ。
〇よじ登り逆立ち
1)壁に背中を向けて立つ。
2)床に両手をついてしゃがみ、足で壁を登るようにして逆立ち。
3)足を少し開いて5秒間キープ。
逆さになる感覚を身につける。
〇うま跳び
1)大人が両手両ひざをつき、子どもに対して横向きにうずくまってうまになる。頭は手の間に。
2)うまの手前で両足を揃えて踏み切る。
3)うまの背中のなるべく奥に手をつき、グッと押して跳び越える。
跳び箱の練習になる。手で力強くうまを押せると、上手に跳ぶことができる。
〇縄跳び “前回し跳び”
1)縄は、真ん中を両足で踏んで、左右のグリップがわきの下ぐらいの長さになるよう調節。
2)両足を揃え、軽くかかとを上げてつま先で構える。
3)わきを締め、肘から先で小さな円を描くつもりで縄を回す。
4)つま先で真上に跳ぶ。長く跳べるように繰り返し練習する。
教えていただいた運動は、どれも公園遊びなどで取り入れられそうです。子どもと一緒に取り組む際のコツはありますか?
「とにかく、ほめることです! 子どもは、できることが増えるとうれしいもの。少しでも伸びたところを見つけてほめてあげれば、能力もやる気も伸びていくはず。幼稚園や学校では、先生にずっと一対一で見てもらうことはできません。ですから、保護者が一対一で取り組み、ほめてあげることで、運動に対する好感情も育つと思いますよ。ぜひ、これらで一緒に遊んでみてください」(同)
実際に取り組む際は、いくつかのメニューを用意して「何をやる?」と選ばせるのがいいとのこと。また、複数のメニューを短時間ずつで取り組むと、子どもは飽きずに楽しむことができるそうです。
「体育や美術、音楽などは、その子の人生の豊かさにかかわる教科です。小学校の体育は、基礎的な運動感覚を身に付けるのが目的。自分の体を操作する力をバランスよくつけておくと、いろいろなスポーツを楽しむための基礎的な能力がつき、ひいては人生をより豊かにする可能性を広げることになるのです」(同)
確かに、「このスポーツをやってみたい」と思えること、そしてそれにチャレンジする基礎能力があることは、人生をより楽しくする要素ですよね。秋の心地いい気候の中で、親子で楽しんでみてはいかがでしょうか。
(取材・執筆:有馬ゆえ)
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