藤咲ちとせ
大手エンタメ情報誌の映画担当を経てフリーランスのエンタメライターに。2003年、2007年に女児を出産した後、日本初の子どものための映画サイト「こども映画プラス」の立ち上げに関わる。長女が年少の頃から10年以上映画館、テレビ、DVDなどで子どもと映画を鑑賞しながら、“親子の映画の楽しみ方”“映画で子どもの好奇心や知識、語彙力、コミュニケーション力がどのように育つのか”を研究し続けている。
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年長 2018年5月21日の記事
子供の小学校入学を迎え、わが子の成長が嬉しいような、ちょっと寂しいような。複雑な気持ちになっているママたちもいることでしょう。子供がこれから少しずつ自分の世界を作っていく中、今後ママ自身はどう過ごしていくべきか、どんな風に生きていくか、ふと考えた方もいるかもしれません。そこで今回は「子離れ、親離れを前向きにとらえ、お母さんが自分自身の人生をイキイキと過ごすきっかけとなるような映画3本をご紹介します。
“おおかみおとこ”に恋をし、“雨”と“雪”と名付けた男女の双子の母となった女性、花。突然夫に先立たれた花は、ひとりで子育てをしなければならなくなります。興奮するとおおかみこどもになってしまう雨と雪を抱え、都会での子育てに限界を感じた花は、山奥の小さな村に移り住むことに。周囲の村人の助けを借りて、田舎暮らしになじんでいく3人でしたが、思春期に差し掛かった雨と雪は“人とは違う自分”に葛藤を抱えるようになります。そしてそれは子離れ親離れのときが近づいたことを意味していたのでした。
“おおかみこどもの母”、という一見ありえない設定の中で、子育ての苦労や親子の絆、突然やってくる子離れの瞬間、その時のせつなさといった普遍的なテーマが描かれた作品です。お母さんお母さん、とまとわりついていた我が子が、気が付いたら自分の手を離れて遠くに行ってしまったような成長ぶりにハッと気づき愕然とする、という場面は子育てをしていると何度も直面します。雨と雪は、それぞれの方法で葛藤を乗り越え自立していきます。子供の成長は嬉しいけどちょっと寂しい。たったひとりで子育ての苦労を乗り越え、寂しくてうれしい子供の旅立ちをゆるぎない母の愛で見守る花の凛とした姿勢に胸がグッと熱くなります。
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■おおかみこどもの雨と雪
2012年/1時間57分/日本/監督・脚本:細田守/声:宮崎あおい、大沢たかお、黒木華、菅原文太
ごく普通のインド人の主婦シャシが、姉の結婚式で訪れたニューヨーク、異国の地で苦手な英語を克服し自分に自信を取り戻していく姿が描かれます。料理上手なシャシは家族のために尽くしているのに、感謝されないどころか英語ができないと娘にもバカにされる始末。家事育児にがんばっているのに認められない寂しさ。コーヒーも満足に注文できず涙していたシャシは藁をもすがる思いで英会話学校に通うことにします。優しい先生やクラスメートと共に、着々と英語を身に着け、気が付けばカフェでもサラっと注文できるまでに成長! イキイキと輝いていく主婦シャシの姿にワクワクします。
“子育て中はどうしても目の前のことに必死なので、世界が狭くなっていることにも気づかない、という状況になりがちです。でも家庭や子供以外に目を向けてみると、新しい世界が見えてくることがあります。英語コンプレックスを克服したシャシの、クライマックス結婚式でのスピーチは感動的。「自分を助ける最良の人は自分」「人は自分のことが嫌いになると自分の周りもイヤになって新しさを求める。でも自分を愛することを知れば、今までの生活も新鮮でステキなものに見えてくる」。自分の人生を色とりどりにするのは自分次第という前向きなメッセージに元気をもらえる作品です。
<データ>
■マダム・イン・ニューヨーク
2012年/2時間14分/インド/監督・脚本:ガウリ・シンデー/出演:シュリデヴィ、アディル・フセイン
この映画は、自分には何もないと思っていた主婦が、自分の才能と情熱に気が付き、お弁当屋を開くまでを描いています。甲斐性のない亭主に愛想をつかし、幼い娘のりこ(のんちゃん)を連れて実家に出戻ったコネなし特技なし資格なしの31歳の主婦、小巻。自分のお弁当にお金を払いたい、と言われた小巻はお弁当屋を開くことを思いつきます。初めて自分の力で稼いて生きていく覚悟を決めた小巻ですが開店までの道のりは甘くない。小巻は、様々な苦労や壁に直面しながら開店を目指して奮闘します。
まさか毎日作っているお弁当が仕事になるとは思ってもみなかった小巻。彼女の一番得意なお弁当はのり弁です。のり弁といっても炒り卵、ゆかりご飯、ホウレン草や小松菜の胡麻和え、肉炒めご飯などが何重にもなっており工夫が凝らされています。主婦が当たり前のように毎日こなしている家事や料理は、十分な「稼げるスキル」になることがあります。やりたいことに気づき、開店に向けて猪突猛進で突き進む小巻に思わずがんばれ!と声をかけたくなります。そんな母の背中を見て育ち、小学生になった娘のんちゃんは、給食も楽しみだけどやっぱりママののり弁が好き。娘のランドセル姿を見送る小巻の充実感にあふれた表情は、お母さん自身が自分の人生を充実させることが家族の幸せにつながる、ということを物語っています。
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■のんちゃんのり弁
2009年/1時間47分/監督・脚本:緒方明/原作:入江貴和/出演:小西真奈美、岡田義徳、倍賞美津子、岸部一徳
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藤咲ちとせ
大手エンタメ情報誌の映画担当を経てフリーランスのエンタメライターに。2003年、2007年に女児を出産した後、日本初の子どものための映画サイト「こども映画プラス」の立ち上げに関わる。長女が年少の頃から10年以上映画館、テレビ、DVDなどで子どもと映画を鑑賞しながら、“親子の映画の楽しみ方”“映画で子どもの好奇心や知識、語彙力、コミュニケーション力がどのように育つのか”を研究し続けている。
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