大和田佳世(おおわだ かよ)
絵本・児童書のライター。出版社勤務を経て、絵本紹介サイトなどで執筆。作家へのインタビューも行う。9歳、5歳、1歳を子育て中です。毎回、この時期ならではのおすすめの絵本を紹介していきます。
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生活・しつけ
年長 2018年3月27日の記事
楽しかった幼稚園・保育園とも3月でお別れ。4月からは小学1年生。新生活のスタートはすぐそこです。新しい世界にとびこんでいく不安とワクワクでいっぱいの子どもたちに贈りたい絵本をご紹介します。
『あしたはだれにあえるかな』(中川ひろたか 文、おくはらゆめ 絵)は、別れのさみしさと、未来へのワクワクが詰まった絵本。おいしいいちごの最後の一口や、あと1つピースをはめたら完成するパズル。楽しくて終わるのがもったいない映画や、きれいな花が散るときの気持ち……。「楽しい今」が終わってしまうことを名残惜しく思いながら、「次は何を食べようか」「何をしようかな」と「未来」を思ってワクワクする、子どもの前向きな気持ちが描かれます。
「ごちそうさま。ああ、おいしかった」「これで かんせい! やったー!」「ああ、おもしろかった」……絵本の中にあふれているのは、幼稚園・保育園で楽しかったことを愛おしむ気持ち。じーんと心がしびれるような余韻とともに、「ああ、楽しいことが終わっていくんだな」と感じます。
子どもにとってはまさに人生で初めての、大きな別れの季節。同時に、もう未来はすぐそこにやってきていて、心がちがう方向に引っ張られてそわそわしちゃうような、4月のはじまりの予感もそばにあります。それは、いつのまにかふくらんでいる桜のつぼみだったり、新しいランドセルだったりします。
園でずっと一緒だったお友だちや先生とのお別れはさみしいけれど……。「さみしいけれど かなしいけれど、でも あしたからの じぶんにも ワクワク」「あしたは だれに あえるかな」。
この絵本を卒園する子どもに読んであげるママは、読みながら思わずぐっときてしまうかもしれません。人生は別れと出会いの繰り返し。4月からは小学1年生! 期待と不安でドキドキの親子が、読めばきっと勇気づけられる絵本です。人生の中でも特別なこの時期を、親子でじっくりあじわってくださいね。
『うみのむこうは』(五味太郎 作・画)は、子どもから大人まで幅広いファンを持ち、450冊を超える著作がある、絵本作家・五味太郎さんの絵本。1979年初版のロングセラーです。広い波打ち際にたたずむ子どもの後ろ姿が、最初から最後までずっと変わらず描かれます。
一方、海の向こうに描かれるのは……? 白い雲と、空飛ぶカモメ。「うみのむこうはずっとうみ。どこまでいってもうみかしら」。さらにページをめくれば、海のむこうは、毎回ちがう世界です。「ふねがたくさんいるかもね」「ひろいひろいはたけかな」「たかいビルのあるまちかしら」……。想像はどんどんふくらみます。絵もどんどん変わります。
家がたくさんあって、子どももきっと住んでいて、みんなみんな友だちで、でも中にはいじめっこもきっといる。遊園地があるかもしれないし、いろんな動物がいるかもしれない。もちろん名前を知らない動物も……。おばけなんかもいるかも!?
絵本をめくりながら、知らない世界を想像します。海のむこうに、楽しいものや、こわいものがいることを想像します。むこうには何があるだろう?と、未知なる世界に思いを馳せながら、最後にやっぱり思うのは……「うみのむこうへ いってみたいね」ってこと。
むこうには、きっと、わたしとちがう誰かがいる。わたしがあちらを見ているように、むこうもこちらを見ているかもしれない。こわいけど、ドキドキするけど、「いってみたいね」って思うのが人間。わたしたち人間だからこそ、まだ知らない世界を想像することができるのですよね。
「おばけなんかもいるかもね」と五味太郎さんはいたずらっぽくおどかしながらも、「あなたたちが生きている世界は、もっともっと、ずっと広いんだよ!」とこっそり目配せしてくれているような気がします。ユーモラスでリズミカルな文章、落ち着いた深い海の色と、あざやかな海の向こうの絵の中に、未来を感じさせてくれる絵本です。
どちらの絵本からも、子どもは未知の世界を歩いていく力があると、書き手が信じていることが伝わってきます。さあ、4月からは小学生。新しい世界に、子どもたちが勇気を出してとびこんでいけますように!
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大和田佳世(おおわだ かよ)
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