大和田佳世(おおわだ かよ)
絵本・児童書のライター。出版社勤務を経て、絵本紹介サイトなどで執筆。作家へのインタビューも行う。9歳、5歳、1歳を子育て中です。毎回、この時期ならではのおすすめの絵本を紹介していきます。
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生活・しつけ
年長 2017年6月27日の記事
梅雨の季節。雨つづきで洗濯物も乾かないし、子どもは外で遊べなくてつまらない。親子で「雨、イヤだなあ…」とため息をつきたくなりますよね。でも、ちょっぴり視点を変えると、憂鬱な雨の日でも、楽しいことはあるかも…? 雨の日の気分をぱっと変えてくれる絵本をご紹介します。
「お、あしたはいい天気になりそうだ。ちょっとでかけようかな。」天気予報を見ていたカエルは言います。翌朝カーテンをあけると、外はどしゃぶりの雨。「やったー!きょうはいちだんとおおあめだ!」天気予報ははずれてなんかいませんよ。カエルにとっては雨がなによりも「いい天気」なんですから。
『カエルのおでかけ』(高畠那生 作)に描かれるのは、うきうきとでかけるカエル。どうやら雨の中でピクニックをするつもりらしいのです。傘なんてもちろんささないし、できたてサックサクのカツバーガーを買って、どしゃぶりの公園へ。噴水のそばに陣取りますが、まわりは大洪水でまるでプールみたい。半分水の中に沈んだ状態で上機嫌のカエルは、デッキに横たわって「いっただきまーす」。さあ、カツバーガーはどうなったと思います?
……もちろん、でろでろの、ぐちょぐちょ。でも、カエルは嬉しさ満点で雨の中にねそべっています。読みながら親子で「うわぁ…」と思わず声が出ちゃいそう。ダイナミックなお楽しみぶりに、「あれ? 雨がイヤだって思っている私たちがおかしいのかな?」と混乱した気分になってしまいます(笑)。おや、そろそろ雨がやみそうだけど……。
「いい天気」もあべこべ、カエルのもっている傘もあべこべ。高畠那生さんの作品にはいつも、とびっきりのユーモアが漂います。カエルの水玉のパジャマは妙にかわいいし、お手製の<びしょぬれかさ>は最高。カエルの部屋や町並みは、どこか海外の一場面みたいでおしゃれ!
本書は2013年に日本絵本賞を受賞。作者が「無心で描いた」という雨粒の迫力にどっぷり浸ってください。雨がふりしきる中でくつろぐのもオツなもの…かもしれませんよ。(みなさんはカエルじゃないから、風邪ひかないようにしてくださいね!)
次にご紹介したいのは『あめふりさんぽ』(江頭路子 作)。こちらはうってかわって、水彩で描かれる女の子が愛らしい絵本です。
今日はあめふり。女の子は大好きな赤い雨傘をもって、長靴をはいて、水色のカッパをきて、あめふりさんぽに出かけます。ちゃぷ、ちゃぷ、ちゃぷ。長靴で歩くときにきこえてくる音や、雨の中を歩けば出会える、たくさんのお友だち。カタツムリさん、アジサイさん、オタマジャクシさん、カエルさん……。江頭路子さんが描く雨の世界はみずみずしく、色あざやかで、「雨の日ってこんなにきれいだったっけ」と目を見はるほどです。
ぽたぽた、ぽったん。ぴたぴた、ぴったん。音が歌になり、あめふりさんぽは軽やかな音楽会にも見えてきます。
持っている雨傘や長靴を、カタツムリやオタマジャクシにかしてあげる女の子。アジサイの紫色や、緑の葉がつややかです。透明感のある色彩のなか、あたたかいぬくもりのある世界がきらめきます。そして雨があがったあとに、みんなが見つけたのは……。
雨がふって、ずっと家の中にいて憂鬱な気持ちになったら「そうだ。あめふりさんぽいこうよ」とお子さんを誘ってみませんか。雨の中でいきいきと動き回る生き物や、雨だからこそ目に沁みる美しいものに、出会えるかもしれませんよ。
『あめふりさんぽ』は文字が多くなく、年長さんの1人読みにもぴったり。親子で読むときは、ゆっくりゆっくりページをめくりながら、絵と言葉のひびきをあじわうのがおすすめです。雨の季節を、親子で楽しみましょうね。
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大和田佳世(おおわだ かよ)
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