おkayu
栄養教諭・給食の専門家がつくる同名の学校給食サイトを運営するメンバー。3名全員が学校栄養職員として東京都の公立小・中学校に勤務した経験を持つ。サイトは、給食作りについての情報や意見の交換、悩み相談やレシピ公開など、内容も多岐に渡り、学校給食関係者から高い支持を得ている。
「おkayu」
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学校・まなび
小学1年生 2015年12月11日の記事
こんにちは、学校給食の現役管理栄養士&経験者のグループ「おkayu」がつづるママノート版「給食室だより」です。今回は、子どもたちに人気の給食献立について取り上げます。
●ママ世代がもう一度食べたい献立は「揚げパン」
まずはネットで「学校給食ベストテン」と検索してみたら、いくつかの情報がヒットしました。中でも興味深かったのは、以下に挙げる親世代&現代っ子の給食ランキングです。
親世代&現代っ子の給食ランキング
親世代の給食人気ランキング | 現代っ子の給食人気ランキング | ||||
第1位 | 揚げパン | 53.9% | 第1位 | 鶏のから揚げ | 74.3% |
第2位 | カレーライス | 52.3% | 第2位 | ハンバーグ | 71.6% |
第3位 | ソフト麺 | 47.1% | 第3位 | カレーライス | 67.3% |
第4位 | 炊き込みご飯 | 27.6% | 第4位 | オムライス | 57.4% |
第5位 | わかめご飯 | 26.2% | 第5位 | スパゲティ | 56% |
パルシステム生活協同組合連合会「学校給食に関する調査」(2012年)より
親世代のランキングを見ると、揚げパンが1位です。私たち「おkayu」のメンバーは、この調査の対象となったお母さんたちよりもはるか昔の世代ですが、やはり人気No.1の献立は揚げパンでした。
これはどういうことかというと、少々乱暴な見方かもしれませんが、私たちアラカン(還)世代から、今のママたち30〜40代くらいまでの約30年では、給食内容があまり変わっていないことを意味していると思います。
また、親世代の4位と5位の米飯はうなずけます。パンが中心だった給食に、米飯が登場し始めたのは昭和57〜58年頃でした。その頃、私たちはすでに給食を作っていましたが、月1回のカレーライスを作るのに試行錯誤したことを思い出します。2~3年後に米飯が定着して「炊き込みご飯」なども作るようになりました。白いご飯はあまり人気がなく、代わって登場したのが「わかめご飯」でした。
ところでこのデータ、親世代のランキングに比べ、子ども世代のランキングについては、少々違和感があります。どれも子どもたちが好きなものではありますが、後ほど紹介する小学校でのランキングとも少し違います。
その理由のひとつは、アンケートのとり方ではないかと思います。この調査では「学校給食に出たらうれしいと思うメニュー」という聞き方をしています。つまり「リクエスト給食」です。このような聞き方をすると、かえって給食ではあまり登場しない献立もランクインしてしまうのです。
「リクエスト給食」なのか「アンコール給食」なのか、質問のしかたによってランキング上位になる料理が大きく違ってきます。私も以前「リクエスト給食」として、子どもたちに調査したときは、「ステーキ」や「お寿司」がランクインしてしまい、苦肉の策で「シャリアピンステーキ(※)」や「手巻き寿司」を出してお茶を濁したこともあります。それからは「今までに出た給食の中でもう一度食べたい給食は?」という意味で「アンコール給食」として、アンケートを取っていました。
※牛肉をたたいて薄くし、おろしタマネギをまぶして柔らかくしたステーキ。ソースにもタマネギを使う。
●今の子どもにも「揚げパン」「カレー」は人気メニュー
下の表は、同じ栄養士が平成13年と23、24年に実施した給食のベストテン調査です。平成13年に調査したT小学校では主食の部・おかずの部・デザートの部とそれぞれ回答してもらい集計しました。平成23・24年はどちらもM小学校で調査したもので、ジャンルを分けずに集計しています。
調査条件が微妙に違うので、結果を比較するには無理がありますが、登場する料理の変遷が少なからず表れていると思うので、ここでご紹介します。
ただし、これはあくまで東京都の一部の小学校の結果です。学校や地域によって、同じ調査でも結果は大きく違ってくるでしょう。
好きな給食献立ベストテン
年度・学校 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | 6位 | 7位 | 8位 | 9位 | 10位 |
平成13年T小 | フルーツポンチ | カレーライス | 焼きそば | コロッケ | 揚げパン | キムチ丼 | サラダ | カレー南蛮、ホットドック、スイートポテト、マリンゼリー、みかん | ||
平成23年M小 | カレー | 揚げパン | 焼肉サラダ | ココア揚げパン | ロースチキン | カルピスゼリー | ひまわり餃子 | ご飯、ゼリー、おでん、焼きそば | ||
平成24年M小 | 揚げパン | 焼肉サラダ | カレー | おかしな目玉焼 | カルピスゼリー | フルーツポンチ | 焼きそば | キムチうどん | ジャンボ餃子 | 七草がゆ、ローストチキン |
これを見ると、「焼き肉サラダ」「ローストチキン」「焼きそば」など、今の世代らしいメニューもあるものの、親世代でも人気の「揚げパン」や「カレー」は、変わらず根強い人気があるということがわかります。
カレーについては、こんなエピソードもあります。ある小学校で人気No1だったビーフカレーについて、お昼の放送で「学校のビーフカレーのカレールーはなーんだ?」というクイズを出してみました。次の日が大変でした。
子どもたちは「ぼくんちは○○の王子様」、「私んちはりんごと……」などと紙に書いてくれた子もたくさんいました。1つのメーカーのカレールーを見ても「ハウスカレー、即席カレー、バーモントカレー、カリー屋カレー」など10種類以上挙がっていて、市販のカレールーの種類の多さにびっくりしたことを覚えています。
家庭によっては2〜3種類混ぜて作っているなど、子どもたちからいろいろ教えてもらいました。その夜は、それぞれの家庭でも、親子で学校のカレールーに何が使われているか想像しあったり、言い合ったりして盛り上がったそうです。
さて正解はというと「小麦粉、バター、カレー粉、ガラムマサラなどの香辛料、ガラでとったスープ」です。全員「はずれ」でしたが、子どもたちの喜んだ顔が今でも思い浮かびます。
●洋風献立が多い結果に、作り手側としての反省も
このアンケート結果を見て、私たち作り手が反省しなければならないことがあります。それは洋風献立が多くランクインしていることです。これについては、発酵食品や日本の食文化について数々の著書をもつ東京農業大学名誉教授の小泉武夫氏も指摘されていて、肉・油の消費量がこの40~50年で3〜4倍に増え、高脂肪・高カロリーの食生活に変わったことを挙げ、わずか1、2世代でこれほど急激に変化した国はないと憂いています。そして「学校給食での食育の大事さが注目されているが、食育すべき相手は子どもではなく、大人である」ともおっしゃっています。
そもそも健康食・長寿食である和食こそが生涯を決定づける食生活の要になるのだと知らせることこそが、食育なのかもしれません。ある栄養士は、昔の暦の要素を入れ込んだ二十四節気の和食給食に取り組んで、人気メニュー調査でも「カレー」ではなく、和食が多く登場してくるようになったと言っています。子どもの生涯教育としての食育=給食となるよう、もっともっと工夫していくことが大切で、それには家庭との連携が重要です。ご家庭でもぜひ、和風献立を見直してみてください。
次回は「給食今むかし」の第2弾として、食器や施設、配膳方法などの変遷について取り上げる予定です。
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