- トップページ >
- 学校・まなび >
- 入学前の子どもが心配していることって?[1/13]
学校・まなび
年長 2015年1月13日の記事
入学前の子どもが心配していることって?[1/13]
〈子どもに聞いた「学校への不安」 前編〉 不安に思うことのトップは「通学」
入学前のこの時期、友だちはできる? 勉強についていける? などなど、心配のつきないお母さんたちも多いことでしょう。でも、見過ごしてはいけないのが子ども自身の不安。
何もわかっていないように見えても、子どもなりに学校に対して、さまざまな思いを抱えているようです。
今回は、現役の小学校教諭であり、子どもに対して直接「入学する際に感じた不安」を調査してきた経験のある鈴木邦明先生に、その調査結果をもとに、子ども自身が入学や学校に対して、どんなことを不安に思っているのかをうかがいます。
●小1のころは育った環境がそのまま子どもに反映する
先生は以前、担任された子どもたちに「入学する際に感じた不安」を調査されたとのことですが、そのきっかけはなんですか?
鈴木 「それまで高学年(5年、6年)を担任することが多く、ある程度、小学校の生活にも慣れ、大きくはみ出すことのない子どもと接していました。
しかし、私が初めて小学校1年生を担任した際、さまざまな子どもがいることに驚きました。これはそれまでの経歴(育ってきた環境)が多様であり、それがそのまま反映されているためだと思います。その多様性が良く出る場合はいいのですが、場合によっては悪く出ることがあります。そのために、決して多くはありませんが、さまざまな形で小学校にスムーズに適応できない子どもがいることも事実です。
そのような事実を目の当たりにし、その原因を探ろうとしたことがアンケート調査を行おうと考えた理由です。アンケートは、通学、給食、友だち、休み時間、先生、運動、掃除、国語の勉強、算数の勉強、その他の勉強の10個の項目について、入学前、6月、9月の3回、私が担任を受け持った1年生のクラス全員に対して行いました」
●入学後に少なくなる「勉強」「給食」の不安
調査をしてみて、子どもたちが不安になっていることはなんだったのでしょう?
鈴木「その結果をまとめたのが以下の表になります。
入学前、6月、9月に不安に思っていること(調査人数27人:複数回答)
(「幼稚園・保育園から小学校へ入学する際に子どもが感じる不安について」
国立オリンピック記念青少年センター研究紀要 青少年フォーラム第7号 より)
どの時期においても、通学に対して不安を持っている子が多く、次いで給食、友だち、国語の勉強、休み時間と続きます。
友だち、勉強(国語や算数)については、調査の前から、ある程度不安を抱いているだろう、と考えていたので予想通りでしたが、通学に関して大きな不安を抱いているというのは意外に思いました。
また、勉強については、学校生活になれるにしたがって不安が解消される場合が多いということも調査をして初めて分かりました。
この結果は、幼稚園や保育園と小学校のシステムの違いが大きな理由と思われます。
特に多くの子どもが不安に感じる通学に ついては、幼稚園・保育園と小学校では、大きくやり方が違っています。入学前は、園または園バスの停留所まで保護者が送迎していたのに対し、多くの小学校 では、近所の子どもたちと一緒に通学班を作り、子どもたちだけで登校し、帰りは同学年の子どもと一緒に帰ることになります。こういった登下校のやり方の違 いなどが原因で、多くの子どもが不安を抱くと考えられます。
また、先ほども書いた勉強(国語や算数)については、入学するまでは不安に感じているものの、実際にやってみるとそれ程難しくなかった、と子どもが捉えていると考えられます。
ちなみに、この調査では幼稚園・保育園という子ども出身園別の統計もとっているのですが、不安項目第2位の給食については、幼稚園出身者の子の回答が多く見られました。これは幼稚園では弁当持参の園が多いため、給食に慣れていないことからの不安があったと思われます。
ただ、最近の小学校では、給食を全部食べ終わるまで残されるなどの厳しい給食指導は行なわれなくなりましたし、実際に給食を食べてみて味や量がわかると、不安もぐんと減ってくるので、あまり心配することはないでしょう」
通学に対する子どもの戸惑いは意外に大きいようですね。でも、入学前は、どこへ行くにも親と一緒ですから、当然なのかもしれません。
鈴木先生、ありがとうございました。次回は、子どもの不安を減らすために、親ができることについてうかがいます。
プロフィール
埼玉県深谷市立桜ヶ丘小学校教諭。子どもの心と体の健康などをおもなテーマに、研究・執筆活動を精力的に行っている。
鈴木先生のHP http://www.geocities.jp/ks20010630/