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学校・まなび
年長 2015年1月14日の記事
入学前後は「通学」「友だち」関係の不安解消を[1/14]
〈子どもに聞いた「学校への不安」 後編〉 言葉にできない子どもの不安を読み取って
前回は、入学前の子どもが学校に対して不安に思うことについて、現役小学校教諭の鈴木邦明先生にうかがいました。
先生の調査では、意外にも通学が不安項目のトップで、続いて給食、友だち、勉強という結果が出ています。今回は、その不安は解消される時期や、親がしてあげることなどについて、引き続き鈴木先生にうかがいます。
●「通学」「友だち」の不安には周囲のフォローが必要
入学前の子どもの不安は、入学後も続くのでしょうか?
鈴木 「不安がいつまで続くかについては、4つのパターンに分類することができました。
1 入学前に不安に感じており、その後も不安を感じている→通学、友だち
2 入学前に不安に感じているが、入学後不安ではなくなる→国語の勉強、算数の勉強、先生
3 入学前に不安に感じていないが、入学後不安に感じるようになる→掃除
4 入学前に不安に感じておらず、入学後も不安ではない→運動
この中で注意したいのは、やはり入学後も不安が続く1と3ではないかと思います。程度はそれほどでないとしても、不安を抱えたままにしておくと、さまざまな不適応(不登校など)のきっかけとなり得る可能性があるので、何かしら不安を減らすためのフォローが必要になってきます。
学校では、勉強(国語や算数)については、子どもがスムーズに取り組めるようなカリキュラムができあがっており、最初は『お遊び・ゲーム』のようなものから取り組み始めます。そのため、小学校が始まってすぐに不安が解消されると思われます。休み時間、運動、先生などの項目についても、学校側でスムーズになじめるようなカリキュラムや配慮がなされているために、わりあい早い時期に不安が減っているのではないでしょうか。
掃除は、 入学後に子どもの不安が増える項目ですが、それまで経験がないために『やってみたら、結構大変だった』と思うのでしょう。これについては、学校側でも、ほ うきの使い方やぞうきんの絞り方、かけ方などをていねいに教えるようにしていますから、それほど深刻な問題になることは少ないのではないかと思います」
●入学後しばらくは、子どもの変化に注意を
入学に対する子どもの不安を解消するために、家庭でできることはありますか?
鈴木 「入学に対する子どもの不安については、多くの子どもに言える『一般的なこと』とその子ども特有の『個別なこと』の2種類に分けて考えるとよいでしょう。
『一般的なもの』は、すでにお話したように、幼稚園・保育園と小学校で異なるシステムの問題などです。入学前の時点で多くの子どもが不安に感じている通学、給食、友だちなどについて、不安が解消できるような声掛けをしてください。通学に関しては、事前に親子で何度か通学路を一緒に歩いて、学校までの通学路の距離感や雰囲気に慣れておくとよいと思います。
さらに通学、掃除、友だちに 関しては、入学後も不安に感じることが多いので、引き続き気にかけていきましょう。最近の1年生の様子を見ていると、人との関わり方があまり上手でない子 が増えているように思います。友だち関係のスキルを上げるために、さまざまな子ども同士の関わりの中で、成功と失敗、両方の体験をさせることが親や教師に 求められていると思います。
一方、 『個別なもの』とは、幼稚園に通っていたのか、保育園に通っていたのかの違いや、地域などによる違いです。私は、神奈川県横浜市(都市部)と埼玉県深谷市 (農村地域)で教員をした経験があるのですが、地域によって、幼稚園、保育園、小学校のシステムなどが違っていると感じました。
また、保育園と幼稚園のどちらに通っていたかによっても子どもが感じる不安に違いがあります。例えばこのときの調査では、保育園に通っていた子どもは、幼稚園に通っていた子どもよりも友だち、運動について強く不安に感じていました。これは、クラス替えの有無や保育園の運動場が幼稚園よりも狭いといった状況などが影響していると考えられます。
このようにその子どもが置かれた状況によって、子どもも不安に感じる内容は違ってきます。親はそういったことに気を遣いながら子どもと接するとよいと思います。
子どもは年齢が低いほど、自分の不安を言葉で表現することは難しいた め、不安に思っていても言葉に出して言えないということがあります。私が耳にしたケースでは、入学後、担任の先生が怖くて不安に感じている子どもが、その ことをずっと親に言えずにいたということがあります。親に担任の先生のことを言う(告げ口をする)と学校で自分が叱られてしまうのではという不安から、 ずっと黙っていたそうです。このように子どもが感じている不安の強さについては、子どもの表面だけを見て判断しないことが大切です。
子どもの不安やトラブルなどは、多くの場合、様々な変化として表れてきます。よくあるケースが、体の不調です。『お腹が痛い』『体がだるい』などは典型的なケース。入学後に、それまでになかった体の不調を訴えるというような場合には、不調への対応をすると同時に、子どもが何かトラブルを抱えていないか、ということを探ってみてください。
ただ、親があまりに心配しすぎると、かえって子どもも不安になってしまいます。まずはあまりプレッシャーをかけず、入学式までの期間を親子で楽しみにしながら過ごしましょう」
親がどっしり構えていることも必要なのかもしれませんね。鈴木先生、ありがとうございました。
プロフィール
埼玉県深谷市立桜ヶ丘小学校教諭。子どもの心と体の健康などをおもなテーマに、研究・執筆活動を精力的に行っている。
鈴木先生のHP http://www.geocities.jp/ks20010630/