1985年順天堂大学小児科入局、1989年同大学院卒業。大学病院、市中病院勤務ののち東京都町田市ではやしクリニック開業。現職として、日本小児科医会 業務執行理事、東京小児科医会 副会長、町田市医師会 会長、東京都医師会 予防接種委員会委員 などを務める。
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生活・しつけ
年長 2019年4月22日の記事
子どもの体調不良の際、「まずは小児科へ」という認識が一般的ですよね。でも、「小児科は一体何歳頃まで行くもの?」と疑問に思っている人もいるのでは。また、この症状は小児科に行くべきか、耳鼻科や皮膚科などの診療科に行くべきかと迷うこともあります。そこで今回は、小児科と内科、そのほかの診療科との違いについて、子どもの年齢によってかかりやすい病気などもあわせて、医療法人社団はやしクリニックの林泉彦先生に詳しくお話を聞きました。
子どもがいると何かとお世話になる小児科ですが、何歳まで小児科に行くべきなのかと、ふと疑問に思いました。そもそも、小児科と内科の違いは何でしょうか。
「まずは対象年齢の違いです。最近は、思春期(時に20歳頃)までが小児科の対象とされます。というのも、新生児から乳児、幼児、学童、思春期の間には、大人(成人)とは違ったその時期特有の病気やトラブルがたくさんあるからです。
この中には、体の問題だけではなく発達・学習・こころ・生活習慣・性の問題なども含まれます。小児科医は、風邪で来院したお子さんの場合でも、全身の様子までチェックしているのですよ」(林先生)
では、具体的に何歳までが小児科の範疇なのでしょうか。いつ頃から内科に切り替えるべきですか?
「初めてかかるなら、15歳までが一般的です。通常の風邪や体調不良の場合、高校卒業くらいまでは、そのお子さんの成育歴を知っている小児科医に診てもらうのが安心だと思います。一方、ぜんそくや各種アレルギー、神経などの慢性疾患の場合は、大人になっても続けて小児科を受診される方も多いです」(同)
高校卒業までとは驚きました。単に年齢で判断するというよりも、新生児期からの体の状態やよくかかる病気の傾向、発達やこころの問題まで、トータルで診断してもらえる“かかりつけ医”となるのが小児科なのですね。
なかには、親と同じ内科を受診している子どももいると思うのですが、子どもが内科ではなく小児科に行くメリットは何でしょうか。
「子どもと大人では、同じ病気になった場合でも、症状の出方や注意すべき点が異なります。また、小児科医は常に『成長と発達』を気遣い、子どもの年齢を考えて全身の診察を行っているというのも特徴です。一方、ご家族のさまざまな状況も考えながら診察しているので、親御さんと別の病院になるということは、そこまで気にせずともよいと思います」(同)
たとえば、子どもが耳を痛がっている場合、小児科よりも耳鼻科に行った方がいいのかな?と迷うのですが、その場合もやはり全身の診察をしてもらえるということで、小児科に行くべきでしょうか。
「耳を痛がるということは中耳炎の可能性があるということで、迷われるのでしょうね。ただ、小さな子どもの場合、中耳炎は風邪の一般的な症状です。痛みがないことがほとんどで、痛みと病気の重さもかならずしも一致しません。
小児科でも鼓膜のチェックをもちろん行いますが、風邪症状の場合には耳の痛みなど一つの症状だけにとらわれず、そのほかの問題がないかのチェックが不可欠です。インフルエンザや風邪だと思われる症状の陰に、実は重たい病気が隠れていることもあります。実際に、小児科医は年に何回もそのような経験をします。
もちろん、中耳炎を含めまれに重症だと判断したときは、最適な医療機関を紹介しますので、まずはかかりつけの小児科を訪れてほしいと思います。地域のいろいろな診療科の専門医を熟知していることも、子どものかかりつけ医の必須条件です。たとえば、同じ診療科でも病院や医師によって得意領域が違います。この子のこの症状なら、この専門医療機関へ行って相談すべき、と判断・紹介するのも小児科かかりつけ医の大切な仕事です。小児科医は子どもの病気の交通整理役でもあります」(同)
子どもは小さい頃の方が、よく熱を出したり体調を崩したりするように感じます。乳児・幼児・児童でそれぞれかかりやすい病気や注意点があれば、ぜひ教えてください。
「生後4か月くらいまでの赤ちゃんでも風邪を引きますが、熱を出すことは少ないです。もしこの時期に発熱した場合は、風邪以外の重たい感染症や生まれつきの病気がないかのチェックが重要になります。
1歳未満の乳児期は食物アレルギーなども起こりやすいのですが、血液検査だけで原因が分かるわけではありません。また、ただ食べ物を避けるのではなく、正しい対策が必要なので、独自で判断せず、迷ったら医師や保健師に相談しましょう。
1歳~小学校入学までの幼児期は、たくさんの風邪ウイルスに感染することで、だんだんと免疫力をつけていく時期。ぜんそくやアトピー、花粉症などのアレルギー疾患も増える時期ですね。
学童期になると、だいたいの風邪にかかり終わるので、小さい頃に比べると熱を出す頻度も減っていきます。一方で、学習の困難さや生活習慣の乱れ、起立性低血圧などの自律神経症状、二次性徴の異常など、幼児期とは異なるトラブルが出てきます」(同)
年齢によって、かかりやすい病気の傾向が違うのですね。あらかじめ頭に入れておくと、いざと言うときに慌てないで済みそうです。最後に、病院に行く際に気をつけることや意識すべきことがあれば教えてください。
「いつからどのような症状が起きたか、簡単にで良いのでメモして持って来てもらうと、診察の助けになるのでありがたいです。小学生であれば、本人に『どこが痛いか、何が一番つらいのか』などを受診前に確認しておくことも役立ちます」(同)
いざ病院へ行って問診票に記入するとき、「熱が出たのはいつからだっけ…何℃だったかな?」と思い出せないことも多いので、子どもの体調不良に気づいた段階で、症状をメモするようにしておくと良いですね。次回は、かかりつけ医の見つけ方について、引き続き林先生に伺います。
(取材・執筆:水谷 映美)
1985年順天堂大学小児科入局、1989年同大学院卒業。大学病院、市中病院勤務ののち東京都町田市ではやしクリニック開業。現職として、日本小児科医会 業務執行理事、東京小児科医会 副会長、町田市医師会 会長、東京都医師会 予防接種委員会委員 などを務める。
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