絵本・児童書のライター。出版社勤務を経て、絵本紹介サイトなどで執筆。作家へのインタビューも行う。9歳、5歳、1歳を子育て中です。毎回、この時期ならではのおすすめの絵本を紹介していきます。
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生活・しつけ
小学1年生 2018年11月30日の記事
冬休みに挑戦したい、小1向け物語絵本5選
読者のみなさまの「子育てのお悩みや疑問」のヒントになる絵本を紹介していく当連載。第4回のテーマは「冬休みに挑戦したい、小1向け物語絵本」です。小学1年生も後半にさしかかり、文字を読むことにもっと慣れてほしい……と密かにお悩みのママ、一方で相変わらず長い文章が苦手なお子さんも多いよう。
そこで、冬休みにちょっと長めの物語絵本に挑戦してみてはいかがでしょうか? 美しい絵やコミカルな絵が、物語を楽しむことを助けてくれます。長く読まれているロングセラーのものを中心に、一人読みはもちろん、親子で読んでも読みごたえのある物語絵本を5冊ご紹介します。
◆今回ご紹介する絵本
『王さまと九人のきょうだい』(岩波書店)
『おどる12人のおひめさま』(ほるぷ出版)
『ロバのシルベスターとまほうの小石』(評論社)
『青葉の笛』(ポプラ社)
『雪のおしろへいったウッレ』(徳間書店)
●ユーモラスで痛快!『王さまと九人のきょうだい』
大昔、「子どもがほしい」と願うおばあさんのもとに、白髪の老人があらわれ、ひと粒飲めば子どもがひとり生まれるという小さな丸薬を九つくれました。丸薬を飲むと、まもなくおなかがふくらんで、九人のあかんぼうが生まれます。その名も「ちからもち」「くいしんぼう」「はらいっぱい」「ぶってくれ」「ながすね」「さむがりや」「あつがりや」「切ってくれ」「みずくぐり」。名前は、九人にそなわった能力そのままで、兄弟が力をあわせて無茶な命令をする王さまをやっつけます! お話のテンポがよく、本が苦手な子も読みやすい痛快な物語。絵は、小学2年生の国語の教科書に載ることが多い『スーホの白い馬』の赤羽末吉さん。王さまの意地悪そうな表情や、そっくりに見えて少しずつ違う九人など、絵の楽しみもいっぱいです。
●金の森・銀の森の美しさに息をのむ、グリム童話『おどる12人のおひめさま』
すばらしくきれいな12人のお姫様がいましたが、なぜか朝になると姫のくつは、一晩中踊り明かしたみたいにみんなぼろぼろ。王さまの命令で、その謎を解き明かそうとする者がつぎつぎお城をおとずれます。貧しい兵士も謎を解こうとしますが……。姿が見えなくなるマントを身につけて、こっそり姫たちの後をつける兵士にドキドキ。お姫様の上品な美しさ、オリエンタルな模様に縁どられた横長の絵、金の森・銀の森の神々しさにため息が出そう。詩人・矢川澄子さんの訳が、これまた美しい日本語です。味わい深いグリム童話です。
●手も足も出ないおもしろさ。『ロバのシルベスターとまほうの小石』
変わった形や色の石を集めるのが好きな、ロバのシルベスター。ある日、願ったことがかなう魔法の小石を手に入れます。大喜びで何を願おうかと考えていたところ、目の前には腹をすかせたライオンが! 慌てたシルベスターは「ぼくは岩になりたい」と願い……岩になってしまいます。まさに、手も足も出ない岩。もう一度小石を手にとって元に戻りたいと願うこともできません。父さん母さんは悲しんでシルベスターを探し回りますが、岩のまま月日は流れ……。どうなっちゃうの? と思っていると最後の最後にどんでん返し! 奇跡は起こり、ハッピーエンドに子どもはきっと大満足。物語のおもしろさを堪能できます。
●平家物語・巻九に出てくる「敦盛の最期」を絵本化。『青葉の笛』
日本に古くから伝わる『平家物語』の有名な悲劇。源氏の熊谷次郎直実は、息子の小次郎とともに、平家との決戦に挑みます。決戦前夜、敵陣から美しい笛の音が聞こえてくるのに、直実は心を奪われます。さぞやりっぱな武将が吹いているかと思いきや、わが子と同じ年頃、16歳の平敦盛の吹く名笛の音でした。合戦で組みあい、心ならずも敦盛を斬ることになる直実。わが子くらいの少年・敦盛を討ち、戦いとは何か、人を殺すことが手柄か……と、やるせない自問自答をします。あまんきみこさんの文は、格調ある言葉づかいながら、美しくやわらかく、言葉の広がりがあります。親子で味わいたい、日本の物語絵本です。
●北欧の森の、冬から春をファンタジックに描いた『雪のおしろへいったウッレ』
6歳の誕生日にスキーをもらった男の子ウッレは、まちにまった雪がふると、スキーで森にでかけました。雪の積もった森はなんてきれいなんでしょう! ウッレは霜じいさんに、冬の王さまのお城へつれていってもらい……? 幻想的なおはなしの中に、めいっぱい体をつかって冬の外遊びをするよろこびが詰まっています。冬の訪れから春のはじまりまでを描いたクラシックな絵本。北欧の子どもの気持ちになって、冬休みにじっくり読んでみてください。
いかがでしたか? ちょっと長めの物語の起伏を、だんだん楽しめるようになる小1。本を読んでドキドキしたり、不思議な気持ちになったり、時には悲しい気持ちになることは、心の育ちにきっといい影響を与えてくれます。親子で本について語り合うのも、冬休みならではの時間の過ごし方になりますよ。一見文字が多くても、おはなしがおもしろいなら、子どもはちゃんとついていって読むものです。まずは気になった絵本を1冊選んで、ゆっくり見てみてくださいね。
(選書・執筆:大和田佳世)
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