大和田佳世(おおわだ かよ)
絵本・児童書のライター。出版社勤務を経て、絵本紹介サイトなどで執筆。作家へのインタビューも行う。9歳、5歳、1歳を子育て中です。毎回、この時期ならではのおすすめの絵本を紹介していきます。
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生活・しつけ
小学1年生 2017年11月14日の記事
日本の伝統芸能と言ってもいろいろありますが、小学1年生に親しめるものと言えば…、狂言や落語がもとになっている絵本はいかがでしょうか。ハラハラ・ドキドキしたり、オチで笑ったり。庶民に親しまれてきた伝統芸能の世界を、絵本をとおして知ることができます。読みやすい2冊をご紹介します。
『ぶす』(もとしたいづみ文、ささめやゆき絵)は、ある屋敷に住む主人と、2人の家来のお話です。ある日、主人が、家来の「たろう」と「じろう」をよびつけて言いました。「このつぼに『ぶす』というたいへんなどくがはいっている。つぼのほうからふくかぜにあたるだけでもしぬというおおどくだ。わしはこれからでかけるが、くれぐれもちかづかないように。いいな?」
主人が出かけたあと、留守番をしていた2人は、ぶすのほうから吹いてくる風にあわてますが、はて、主人は平気で手に持っていたではないかと気づきます。それもそのはず、つぼの中身は、当時手に入りにくかった黒砂糖! けちな主人は家来にそれを悟られまいと、「おおどくだ」などと嘘をついたのです。
つぼの中をのぞき、食べてみて「しぬほどうまい!」と知った2人は、ついつぼが空っぽになるまで食べてしまいます。さあ、帰ってきた主人にたろうとじろうがどう言い訳したかというと…? 面白いですよ。続きは絵本を読んでのお楽しみです!
「ぶす」とは「附子」、つまりトリカブトの猛毒のこと。欲張った主人が嘘をついたばかりに、かえって家来に全部食べられてしまうという、こっけいですが含蓄に富むお話です。「ぶす」は狂言の人気演目。一休さんのとんち話になったり、学校教科書に採用されたりしているおなじみの演目です。「たろう」「じろう」は実際の狂言では「太郎冠者(たろうかじゃ)」「次郎冠者(じろうかじゃ)」と呼ばれます。
狂言は室町時代に成立したと言われる、古典芸能のひとつ。難しそうに見えますが、意外とお話はかんたんで面白いのです。特に本書はわかりやすく描かれているのでおすすめ。狂言の面白さを絵本で味わってくださいね。
『じごくのそうべえ』(田島征彦作)は、上方落語の「地獄八景亡者戯(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)」を題材にした落語絵本です。「とざい とうざい。かるわざしの そうべえ。 いっせいいちだいの かるわざでござあい。」扇を手にもった軽業師そうべえが「そうれ。ぺペン ペンペン ペーン」と綱渡りを披露していたそのとき、「おっとっとっとっと。あーーーーっ。」落ちて死んでしまったからさあたいへん。
そうべえが気づくと、そこは、どうやら地獄へつづく道。ちょうど車が走ってきて乗せてもらいますが…。「うまいこというて、車にのせてもろたんはええけど、あれが、ゆうめいな火の車やったんやな。じごくへのちょうとっきゅうやったんや。ああ、こわあ。」そうべえはこの調子で衣をはぎとられ、さんずの川をわたり、えんま大王に地獄行きを命じられます。しかし、途中で出会った山伏ふっかい、歯ぬき師しかい、医者ちくあんといっしょに地獄を大暴れ。熱湯釜ゆでも針山も、4人の特技をいかせばへっちゃらです。
面白いのは、人呑鬼(じんどんき。人を食べてしまう鬼)の腹のなかで4人がいっせいにいたずらをする場面! 子どもも大人も大笑いです。人間国宝の桂米朝をして、「スケールの大きさといい、奇想天外な発想といい、まずあまり類のない大型落語」と言わしめる「地獄八景亡者戯」。その大作が絵本で楽しめるのですから、一読の価値あり。第1回絵本にっぽん賞を受賞したロングセラーです。
2冊とも難しくなく、一気に読めます。言葉のリズムやストーリー展開など、庶民が親しんできた日本文化の魅力に気づくことができますよ。狂言や落語の絵本は、他にもたくさん出版されているので、探して手にとってみてくださいね。
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