北川 達夫
早稲田大学法学部卒業後、外務省入省。
在フィンランド日本国大使館在勤(1991~98年)。
帰朝後に退官、現在は国際的な教材作家として日本とフィンランドをはじめ、旧中・東欧圏の教科書・教材制作に携わる。
日本では全国各地の学校を巡り、グローバルスタンダードの言語教育を指導。
OECD・PISA2009読解力調査国内専門委員。
日本教育大学院大学客員教授。
公益財団法人文字・活字文化推進機構調査研究委員。
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生活・しつけ
年長 2013年8月12日の記事
☆フィンランド式絵本日記で、子どもの思考力UP!
《絵本日記を書こう》 絵本の読みっぱなしはもったいない。親子で読書の感想を語り合って考える力を養おう!
豊かな自然と福祉国家、
最近では北欧デザインのおひざ元としても知られる
フィンランドは、教育水準の高さでも注目を集めています。
経済協力開発機構(OECD)が各国で実施した
学習到達度調査の「読解力テスト」で
フィンランドは2000年、2003年と連続して1位を獲得、その後もトップ3に位置しています。
一方日本は2003年、2006年と連続して上位10カ国に入れませんでした。
読解力世界一のフィンランドの
教育メソッドに詳しい北川達夫先生に、
年長児のいる家庭で取り入れられる
「フィンランド式教育法」についておうかがいしました。
●練習すれば、発想力や論理力は養える!
フィンランドはどうして読解力テストで
世界1位を連続して獲得できたと考えられますか?
北川 「私は外交官として長くフィンランドに滞在しましたが、
フィンランドの教育は『グローバル・コミュニケーション力』を養う内容であることを、身にしみて感じました。
グローバル・コミュニケーション力とは、
世界中のどこのだれと話す場合でも、
相手の言うことを理解し、
自分の言うことを理解させるための基礎能力のことです。
フィンランドでは幼いときから
発想力、論理力、表現力といった
グローバル・コミュニケーションの基礎を育む手法が
教育現場で取り入れられています。
子どもたちに自然にそういった能力が
段階的に身に着くよう、訓練されているのです」
「訓練」ということは、
日本でもその練習をすれば発想力や論理力は身につけられる?
北川 「そのとおり。私がフィンランドの教師たちに
『どうしてフィンランドは読解力テストで1位になれたのですか?』
と質問したところ、
『よく練習したからだろうね』という答えが返ってきました。
つまり、日本人は練習が足りていない、ということになります」
●フィンランド式教育法を家庭で取り入れよう
フィンランド式の教育法は、
5~6歳の年長児でも可能なのでしょうか?
北川 「年長児のいる家庭では、絵本の読み聞かせをすることが
多いと思いますが、そのときこそが発想力や論理力を養う練習にぴったりです。
絵本の内容についての親子の対話が、
子どもにとっては良い『練習』になります。
フィンランドの学校現場では
「Miksi?(どうして?)」
という質問が、先生から生徒に矢継ぎ早に投げかけられます。
生徒がなにか感想をいえば
「どうしてそう感じたの?」。
なにか意見をいえば
「どうしてそう思ったの?」といった具合。
「Miksi?(どうして?)」は思考の基本です。
最初のうち、子どもにはきびしく感じられるかもしれませんが、
「Miksi?(どうして?)」と問われることで、
子どもは「なぜ自分はそう思ったのだろう」と、
つねに自分の発言を客観的に見直すことになります。
これが子どもの論理力、
さらには多面的思考力(自分の発想と他人の発想を客観的に検討する力)を伸ばすのです。
多面的思考力は、
世界中のさまざまな人々とコミュニケーションをはかったり、
ものごとを深く考えたりするときに必要な力です。
同じことを、幼少期から家庭ですれば
自然と論理力や多面的思考力が身に着くはずです」
論理力というと難しく感じるのですが…?
北川 「難しく考える必要はありません。
子どもがなにか感想を言ったら、
必ず『どうして、そう感じたの?』とたずねる。
あるいは『どこを読んで、そう思ったの?』とたずねる。
それだけのことです。
意見には理由があることを、
大人や友だちとの対話の中で学ぶのです。
子どもが感想をいえたら、最後に
『○○ちゃんがそう思った理由はよくわかったよ、ありがとう』
と、子どもの言葉をしっかりと受け止めたことを伝え、
お礼のことばで、その労をねぎらうことが大切です。
ちなみに、無理にほめる必要はありません。
これまでとは異なる、すばらしい応答をしたときにのみ、
しっかりとほめてあげるようにしましょう」
親子で絵本の感想を話し合うやりかたなら
だれでも始められそうですね。
北川先生、ありがとうございました。
次回、フィンランド式読書日記について
詳しくおうかがいします。
おたのしみに!