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学校・まなび
年長 2012年10月9日の記事
翻訳絵本・児童書で子どもの読書力アップ
【読書力を身につけるコツ1】子どもには、たくさんの本に触れて読書好きになって欲しい!読書力をつけるには、どうすればいい?
子どもには、たくさんの読書体験を通して、世界を広げて欲しい……と、多くのママが願っています。でも、子どもにどのような本をすすめればいいのでしょうか?
『最新版 一生、読書好きになる本の選び方』(学研パブリッシング)をはじめ、子どもたちへの読書指導や執筆活動を通して本を紹介していらっしゃる、国語専科教室の吉田真澄先生にお話をうかがいます。
吉田先生、子どもにどんな本をすすめるといいでしょうか?
吉田 「おすすめは『翻訳絵本・児童書』です。幼いころに良質な翻訳絵本・児童書に触れてきた子どもは、しっかりとした読書力がついていることが多いんですよ。
その理由は大きく3つあります。
1つめは、良質な翻訳作品は言葉がきれいだということ。
例えば、石井桃子さんや瀬田貞二さんが訳した長く親しまれている作品は、吟味された日本語が使われていて、言葉がきれいでていねいです。
それは、声に出して読むとよくわかります」
でも、そのような時代を経た翻訳作品はちょっと敷居が高くて……「言葉が古くて、子どもが難しく感じるのでは?」という人もいるかもしれません。どうすればいいのでしょうか?
吉田 「わからない言葉が出てきたら、そのつど親が説明してあげればいいんですよ。
そういう言葉も本から覚えていってほしいですね。
良質な翻訳絵本のていねいな日本語に触れてきた子どもは、自分が話すときもていねいな言葉で話せるようになります」
吉田先生が翻訳絵本・児童書をすすめる
2つめの理由は、海外作品の持つ「広がり」や「スケール」の大きさにあるといいます。
吉田 「未就学児向けの絵本を例にとると、日本では、『しつけ』、『幼稚園』、『お母さん』といった、身近な狭い世界を題材にした本が多いのではないでしょうか。
一方、海外の絵本はもっと広い世界観で描かれたものが多くみられます。
私が絵本をすすめるとき、よく下記のテーマで本を紹介しています。
●自分が周りから愛されているという自信を感じられる本
●生きることを肯定するまなざしを持った本
●鬱屈(気分が晴れない、心がふさぐこと)から心を解き放つ本
このような広がりを持った作品は、海外の本のほうが多いと思います」
子どものしつけのため……と、身近なテーマの本ばかり選んでしまいがちですが、想像力をかき立てる、物語のスケールの大きさも本選びの大事なポイントなのですね。
吉田 「そうですね。作家の中に、子どもに共感して語りかけたい何かが確実にあるのか、ということも大事です。翻訳絵本には、それがあることが多いと感じます。
絵本だけではありません、ファンタジーのような児童文学になれば、スケールの違いはさらに顕著になります。
イギリスのファンタジーが日本の作家がなかなか真似できないようなスケールの大きさで展開することは事実です。土壌が違いますから、それは仕方がないことかもしれませんね」
そして、吉田先生は
3つめの理由として、作品の世界観を作り上げる、作家の優れた洞察力を挙げます。
吉田 「たとえば『床下の小人たち』では、作家の並外れた洞察力で、小人が客観性をもってリアルに描かれています。
ファンタジーはリアリティーがないと破綻してしまうんですよ。
細かいことこそ、ていねいに語ることで、大きなうそが成り立ち、その世界に入り込んでいけるのです。
ファンタジーの世界に入り込むとき、子どもは豊かな想像力で頭の中に世界を作り上げます。想像力は人の立場を思いやったり、先を見通したりする力にもつながる、大切なものです。
想像力によって本のもつ広い世界で遊び、登場人物に共感する楽しみを覚えます。
つまり、本物の読書力が身につくのです。
大きな世界を想像できる子が想像力の幅を狭めていくのは簡単ですが、狭い日常の世界を描いた物語しか読んでいないと、スケールの大きい物語を読む想像力は育まれません。
だからこそ、スケールの大きい作品に触れることが大切なのです」
吉田先生、ありがとうございます。
次回は、子どもの成長とともに変化する本の選び方・読み方について、吉田先生にお話しをうかがいます。どうぞお楽しみに!