次代を担う心豊かでたくましい子どもを社会で育むことを目的に、2007年にスタートした事業。区市町村を実施主体として、放課後や週末等に、地域に安全・安心な子どもの活動拠点「放課後子供教室」を設け、様々な体験活動や交流活動等の取組を全ての小学校区で実施することを目指している。
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学校・まなび
小学1年生 2019年5月7日の記事
学童とはどう違う?「放課後子供教室」とは
小学生の放課後の居場所として、「放課後子供教室」という選択肢があるのをご存じでしょうか? 放課後子供教室は、基本的に全児童が利用可能。そのため、保護者の就労形態に関わらず利用されているそうです。その利用条件や学童クラブとの違いについて、東京都教育庁・放課後子供教室推進事業の担当者に取材しました。
●「放課後子供教室」とは? 誰が利用できるの?
いま「学童クラブ(以下、学童)」と並び、小学生の居場所の一つとなっている「放課後子供教室」。そもそも、これはどんなものなのでしょう?
「『放課後子供教室』は、子どもたちが放課後や週末を安心・安全に過ごすための地域の居場所です。区市町村が実施主体となり、小学校の空き教室や校庭、体育館などを利用して、日々の遊び場が提供されたり、学習支援やスポーツ活動、体験活動などのプログラムが開かれたりしています。
対象は、学童に通う子を含む全児童。活動時は、見守りのスタッフが必ずつきます。運営は地域住民が中心に行うケース、民間業者に委託されているケースなどさまざま。ただ、どちらにしても大半の放課後子供教室において、地域住民の方が参加、協力をしています」(東京都教育庁 地域教育支援部・放課後子供教室担当者)
ただ一口に「放課後子供教室」と言っても、その実施形態はさまざまだとか。
「空き教室や校庭、体育館を放課後の遊び場として開放するパターン、○○教室(一輪車教室、工作教室など)といった自由参加のプログラムを定期的に開催するパターン、その両方を行っているパターンなど、多様です。
活動内容もさまざまで、多いのは校庭や体育館などで行う『自由遊び』(42%)と、宿題などの学習の場を提供する『自主学習』(38%)。子どもが自由参加できるプログラムには、スポーツ、文化・芸術、工作・調理、ゲーム・レクリエーション、学習支援などがあります。こうしたプログラムの指導者として、地域住民の方が参加している事例も多いようです」(同)
活動頻度も自治体によって異なり、年間290日というところもあれば、年間10日というところもあるそう。活動の少ないところには、放課後の拠点としてすでに児童館などがあるため実質的にニーズがなかったり、そもそも子どもの数が少なかったりという事情があるといいます。
●放課後子供教室は、子どもと地域の人たちの交流の場
放課後子供教室の特徴に、地域住民の参加協力をすすめている点があります。これはなぜなのでしょう?
「この事業の大きな目的の一つに、『子どもたちが地域社会の中で心豊かに育まれる環境づくりの推進』があるからです。そもそもこの事業の背景には、子どもたちの安全を脅かす事件の増加、青少年の問題行動の深刻化、地域や家庭の教育力の低下などがあります。
放課後子供教室は、いわば子どもと地域の人たちの顔合わせの場。地域の人が校内にいることで不審者が入ってきても発見しやすい。また、子どもが家の外で困ったときに頼れる大人を増やすこともできるでしょう」(同)
実際に、保護者などから「子どもの方がよっぽど地域の人の顔を知っている」といった声も聞かれるそう。子どもが地域の方々と挨拶を交わすような関係を築けるのは、保護者としてはとてもありがたいことです。
同時に、子どもにとっては、防犯面以外のメリットもあるそう。
「学校の校庭なら、公園では禁止されがちなボール遊びものびのびできますよね。体育館が開放されていれば、天候に左右されず思いっきり体を動かせます。また、学童と放課後子供教室が連携していれば、学童に入っている子と入っていない子が放課後も一緒に遊ぶことができます」(同)
確かに、学童の子は帰宅時間まで学童の専用室で過ごすルールになっているため、仲のいい子が学童に行っていない場合、さみしい思いをするという話も聞きます。放課後も仲のいい友だちと一緒に遊べるのは、子どもにとって精神的な安定にもつながりそうです。
●メリットが多い学童との“一体型”
今、放課後子供教室はどのぐらいあるのですか?
「現在、都内では9割以上の小学校で実施されています。また全体の6割程度は、同じ小学校の敷地内で放課後子供教室と学童とを実施し、学童の子が放課後子供教室のプログラムに参加できる“一体型”です。
一体型のメリットの一つは、学童の子どもの活動が制限されないこと。まず、先も触れた通り、学童に行っているかいないかで遊ぶ相手を決めずにすみます。放課後子供教室のプログラムに参加することで、活動の幅が広がることもあるでしょう。
地域とつながる機会を得られるのもメリットでしょう。学童の子は学童の専用室で過ごすことが多く、地域との接点が少なくなりがちですからね」(同)
もう1点、放課後子供教室と学童、小学校との間で子どもの情報を共有できるのも、一体型のメリットだそう。
「例えば、学童のスタッフが『この子、ちょっと気になるな』と思ったときに、放課後子供教室のスタッフや担任の先生などと話し合うこともあると聞きます。その結果、いじめにつながるような火種に対し、小さいうちに対処することができたり、家庭での問題などが発覚したりといったケースもあるそうです」(同)
まさに地域子育ての利点がわかるエピソードですね。学童と放課後子供教室の一体型は今後も推進の方向で、全国では、全2万校の小学校区の半数での実施を目標としているそうです。
●「学童代わりに通わせる」には、注意が必要
もし小学校で毎日、放課後子供教室が行われている場合、「学童の代わりに放課後子供教室に行かせればいいのでは?」と考える保護者もいそうです。その際、気をつけるべきことはありますか?
「両者の違いを理解した上で、ご家庭ごとに判断して頂きたいのですが、前提として、放課後子供教室は学童と違い、保護者に代わって子どもを預かる保育施設ではありません。
学童とは違い、基本的に子どもの入退室を管理しないことが多いですし、滞在できる時間帯も学童とは異なります。多くの放課後子供教室では、学童のような延長利用もなし。ほとんどは明るいうちに帰宅できるよう、冬は16:30までといったところもあります」(同)
なるほど。子どもの所在を明らかにしたい、帰宅時間をきちんと管理してくれる方がいいというなら、学童を選ぶべきですね。また、学童代わりと考えるならば、少なくとも学校と家を安全に行き来できたり、鍵を扱えたり、自分一人で留守番ができたりする年齢になってからがよさそうです。低学年のうちは『学童代わりに放課後子供教室を利用する』というのは現実的ではないのかもしれません。
「スタート時期にも要注意。学童は4月1日からスタートしますが、放課後子供教室は早くても入学式の後。なかにはゴールデンウィーク明けから、夏休み明けから…というケースもあります」(同)
そんな違いもあるのですね。遊びや学びを通して地域とつながることのできる放課後子供教室。その詳細は、小学校や役所の担当部署などで聞くことができます。小学校ライフにどんな楽しみが待っているか、お子さんと一緒にチェックしてみるのもいいかもしれませんね。
(取材・執筆:有馬ゆえ)